2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22741
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福村 圭介 広島大学, 統合生命科学研究科(総), 助教 (10880049)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 神経ペプチド / 摂食行動 / 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食の溢れる現代では、適切な栄養分を含む食餌を選択することが健康長寿に必須である。これまでに研究代表者は、末梢組織での代謝変動が餌中の脂質成分に対する選好性行動を調節することを明らかにした。本研究では、体内の栄養状態や末梢組織での代謝変動に応答し、脂質成分に対する摂食行動を担う視床下部因子を明らかにすることを目的とする。さらに、栄養状態に応答した視床下部因子が、体内の脂肪組織に与える影響を解析することで、体内のエネルギーホメオスタシスを担う分子メカニズムを明らかにする。 令和2年度の研究では、新規脳因子であるNeurosecretory protein GL (NPGL) に着目し、その機能と体内の栄養状態との関連を解析した。実際には、通常食 (NC)、高脂肪食(HFD)、高スクロース食(HSD)、中脂肪・中スクロース食 (MFSD)の給餌下で、化学合成したNPGLをラット脳室内に慢性投与し、摂食量および組織重量を測定した。その結果、NCおよびMFSD給餌下では、NPGL慢性投与により、摂食量が増加した。また、HSDおよびMFSD給餌下では、白色脂肪組織の総重量が増加した。すなわち、餌中の栄養組成は、NPGLの生理作用に影響することがわかった。特に、餌中のスクロースは、NPGLの脂肪蓄積作用を増強することが示唆された。一方で、HFD給餌下では、摂食行動の亢進および脂肪蓄積を誘導しないことが明らかとなった。また、令和2年度の研究成果は、査読付き国際誌に投稿し、既に受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定である、脂質選好性行動を調節する視床下部因子は同定できていないものの、末梢組織での脂肪蓄積や摂食行動の制御を担うNPGLの機能解析を精力的に行なった。令和2年度の研究成果は、既にBioscience, Biotechnology, and Biochemistry誌に受理されている。したがって、当初の計画以上ではないが、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脂質選好性行動を調節する視床下部因子の同定 化学合成した視床下部因子群の脳室内慢性投与、前駆体遺伝子過剰発現により、脂質選好性に影響を与える因子をスクリーニングする。さら に、遺伝子改変動物(産出細胞特異的な活性化が可能)を作成し、脂質選好性行動に与える影響を解析する。 2)NPGLの機能解析 令和2年度に引き続き、栄養分の組成が異なる人工飼料を動物に摂食させ、体内の栄養状態が視床下部因子の機能に与える影響をマウスを用いて検討する。実際には、NPGL前駆体遺伝子過剰発現動物および遺伝子改変動物を用いて、脂質成分への選好性行動、異なる人工飼料給餌下での摂食量、体重および脂肪重量を測定する。さらに、異なる人工飼料の給餌下で、脂肪組織のトランスクリプトーム解析を行い、NPGLが末梢組織に与える影響を網羅的に解析する。 また、視床下部因子の産出細胞を単離・解析することで、摂食行動を変化させる末梢からの入力についても検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、COVID-19に関連した研究制限により長期間の動物実験が困難であったこと、学会のオンライン化および中止により旅費が必要無くなったこと等が挙げられる。次年度は、COVID-19の影響を見据え、長期間の動物飼育が必要な実験の割合を減らし、ペプチド合成などの主にIn vitroでの実験に必要な消耗品類の費用や国際誌への投稿費として次年度使用額を充てる予定である。
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Research Products
(1 results)