2020 Fiscal Year Research-status Report
異種GPCR間の結合を介した新たな小脳運動学習制御機構の解明
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20K22745
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
坂入 伯駿 順天堂大学, 医学部, 助教 (20876693)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 異種GPCR間相互作用 / 運動学習 / LTD(長期抑圧) / 1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1) / GABA-B受容体(GBR) |
Outline of Annual Research Achievements |
運動学習とは運動の反復により動きの滑らかさや正確さを獲得する学習過程であり、主に小脳がその機能を担う。小脳運動学習が起こる仕組みは、小脳プルキンエ細胞の長期抑圧(LTD)という現象によって説明される。LTDが生じるきっかけのひとつが、プルキンエ細胞の後シナプス上にある1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)の活性化である。近年の研究で、mGluR1が発現するシナプスにGABA-B受容体(GBR)が共発現し、GBRの活性化がLTDを増強することが明らかになったが、増強の機序は未解明である。申請者は小脳や株化細胞におけるmGluR1とGBRの結合や細胞内シグナルの双方向調節を発見し、更には予備的検討でmGluR1-GBR間の結合状態が受容体の活性に応じて変化する可能性を見出した。本研究ではこれらを基に、mGluR1とGBRの結合状態変化の視点からLTD増強機序の解明を目指している。 本年度はmGluR1とGBRの結合変化とシグナル変化との連動の証明、及び介入方法確立を目的とした。受容体の結合状態変化を経時的に定量する実験系(NanoBiT)、mGluR1とGBRそれぞれの細胞内シグナルを同時かつ経時的に測定する実験系(DAG BacMamアッセイ、cADDis cAMP BacMamアッセイ)の導入を進めた。GBRシグナルの測定プロトコルは既に確立させ、これを基にmGluR1シグナルとの同時測定系を調整している。これらの手法を組み合わせて受容体間の結合状態変化による各受容体のシグナルの変化を示すとともに、結合への介入の評価系とする。COVID-19流行による物品の入手困難や実験時間確保の困難により計画進行はやや遅れている一方、本年になってクライオ電子顕微鏡解析などGBR研究について大きな進展があり、受容体間結合への介入候補部位は計画当初の予定よりも絞り込むことが出来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は受容体間結合への介入までを研究目標としていたが、COVID-19流行による物品の入手困難や実験時間確保の困難により計画進行はやや遅れている。一方、本年になって他の研究グループよりクライオ電子顕微鏡によるGBRの詳細な構造解析結果が報告されるなど、GBR研究について大きな進展があった。これにより受容体間結合への介入候補部位は計画当初の予定よりも絞り込むことが出来ている。総じて、研究全体としては(3)やや遅れているに該当すると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、mGluR1とGBRの結合状態変化がもたらすmGluR1依存性LTDの増強を初代培養プルキンエ細胞において証明することを目指す。受容体間結合や細胞内シグナルの同時測定系のプロトコルは間もなく確立できるため、これを評価系として、各受容体の変異体による結合とシグナルの変化を測定し、結合部位を特定する。近年の新たな研究報告をうけて結合部位の候補は研究計画当初より更に限定できていることから、部位特定に要する時間は短縮できると想定される。変異体実験をもとに、阻害ペプチドなど結合への外的な介入方法を考案し、神経細胞での評価へとつなげる。神経細胞での測定は上記の測定系および既に申請者の研究室で確立している実験系を用いるため、スムーズに評価を進められる。
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Causes of Carryover |
COVID-19流行に伴い国内外における必要物品の生産停止や納期の大幅な延長、また実験時間の短縮要請などがあり、物品費等の未使用分が生じた。また参加予定であった学会のすべてがオンライン開催を実施したため、旅費の未使用分が生じた。 現在物品の生産や流通はほぼ回復し、また実験時間を含む研究環境も新たな体制が整いつつあるため、未使用分は概ね本年度の計画を踏襲して使用する。旅費については各学会の現地開催が再開され次第積極的に発表し使用する。
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Research Products
(3 results)