2020 Fiscal Year Research-status Report
Annotation of HAZV segmented genome internal region necessary for viral propagation
Project/Area Number |
20K22770
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山形 優太朗 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (70879410)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ハザラウイルス / 転写・複製 / ゲノムパッケージング / ミニゲノムアッセイ / 膜蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
クリミアコンゴ出血熱ウイルスのモデルウイルスであるハザラウイルス(HAZV)の分節ゲノムの翻訳領域内の転写複製やウイルス粒子への取込に必要な配列を同定するため、当初は計画通り、前任者が作成したミニゲノム・VLP実験系を用いて探索を進めた。M分節5’側非翻訳領域(UTR)内の転写複製に重要な領域の絞り込み、M分節5’側UTRの末端から81~162塩基の配列に転写複製に重要な部位が含まれる可能性が示唆された。また、HAZVの各分節のUTRとRluc配列の間に翻訳領域の一部を挿入したミニゲノム変異体発現プラスミドを作製し、ミニゲノム実験系を用いて変異によるレポーター活性の変化を調べたが、挿入によりレポーター活性が上昇する翻訳領域配列は見つからなかった。さらに、ミニゲノム発現細胞にHAZVを感染させVLPを作出する実験系を再現確認したが、前任者の実験結果の再現性が取れなかった。そこで実験キット説明書や前任者の実験ノートを調べたところ、実験系の設計や再現性の一部に問題があることが判明した。これらの問題点を解決するため、レポーターとコントロールに用いるルシフェラーゼを変更する、プラスミド発現のみでVLPを作出する実験系の構築を目指す、等の実験系の改良を試みた。さらに、ウイルスゲノムの粒子取込に影響を及ぼす可能性のあるHAZVの膜蛋白質であるG蛋白質について、先行研究で見出された切断部位候補の変異解析を行った。結果、最も多いG蛋白質切断体の切断部位の位置をRRTN部位の近傍まで絞り込んだ。令和2年度は新型コロナウイルス感染症流行により参加予定の学術集会が来年度に延期になる等の理由で、研究成果を発表する機会を得られなかった。令和3年度は学術集会や論文投稿等、何らかの形で研究成果を外部に発表することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前任者が作成したHAZVのミニゲノム・VLP実験系を用いて、HAZVゲノム分節の転写複製やウイルス粒子への取込に必要な配列の探索を試みた。M分節5’側UTR内の転写複製に重要な領域の絞り込んだ結果、M分節5’側UTRの末端から81~162塩基の配列に転写複製に重要な部位が含まれる可能性が示唆された。次に、HAZVの各分節のUTRとRluc配列の間に翻訳領域の一部を挿入したミニゲノム変異体発現プラスミドを作製し、ミニゲノム実験系を用いて変異によるレポーター活性の変化を調べた。L分節は3’側を500nt、5’側を1000~2000nt、S・M分節は3’側を300nt、5’側を300nt挿入した変異体ミニゲノムを作製したが、挿入によりレポーター活性が上昇する翻訳領域配列は見つからなかった。また、ミニゲノム発現細胞にHAZVを感染させVLPを作出する実験系を再現確認したが、前任者の実験結果の再現性が取れなかった。そこでレポーターアッセイキットの説明書や、前任者の退職後に閲覧可能になった前任者の実験ノートを調べたところ、レポーターとコントロールに用いるべきルシフェラーゼが逆だったこと、前任者の感染VLP実験系の実験結果の再現性が不充分なことが判明した。このため、使用するルシフェラーゼ配列の修正や、プラスミド発現のみでVLPを作出する実験系の構築を進めた。さらに、ウイルスゲノムの粒子取込に影響を及ぼしうるHAZV G蛋白質について、切断部位候補の変異解析を行った。先行研究でG蛋白質の切断部位候補として挙げられたアミノ酸部位に非切断変異を加え、切断部位候補からN末端側を欠失させた変異体発現プラスミドを作製し、COS細胞内で発現させてウエスタンブロッティングで検出して変異による変化を調べた。結果、検出量が最も多いG蛋白質切断体の切断部位がRRTN部位の近傍にあることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
異動先の長崎大学はHAZV研究に関して豊富な研究実績とリソースを有しており、異動後のHAZV研究の継続に支障はない。研究材料を移転し、作製したミニゲノム変異体配列のレポーター遺伝子の変更を完了させた後、改善したミニゲノム実験系を用いてHAZVゲノム分節の転写複製やウイルス粒子への取込に必要な配列の探索を引き続き進める。探索と同時にHAZVのミニゲノム実験系とVLP実験系のさらなる改善を引き続き試みる。改善の手掛かりとして、リバースジェネティクスによるウイルス合成系に着目した。ウイルス合成系はウイルス蛋白質発現プラスミドを減らしvRNAの代わりにミニゲノムを発現させることで、ミニゲノム実験やVLP実験に応用することができる。Fullerらが開発したHAZVのリバースジェネティクスによるウイルス合成系は、T7プロモーターでvRNAのcDNAを発現させる手法である。しかしこのウイルス合成系は、ウイルスの作出に5日を比較的長い時間がかかる、ウイルス蛋白質配列を欠損した変異体ウイルスを作出できない等の問題点がある。そこで、使用する培養細胞およびプロモーター配列を変更し、ミニゲノムやVLPの合成効率を改善したミニゲノム・VLP実験系や、ウイルスの合成効率を改善し、ウイルス蛋白質配列を欠損した変異体ウイルスも作出可能な新しいウイルス合成系の確立を目指す。具体例として、A型インフルエンザウイルス(IAV)の合成系をモデルとして、培養細胞に293T細胞、vRNA発現プロモーターにPolIプロモーター、蛋白質発現プロモーターにCAG(CMV)プロモーターを用いる系を想定している。IAVの合成系をモデルとした理由は、IAVは分節化したマイナス鎖RNAをゲノムとして有する、mRNAのキャップスナッチングを行う等、ウイルスゲノムの特徴に関してHAZVと共通する点が見られるためである。
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Causes of Carryover |
令和2年度の当初の計画では、2020年度の日本ウイルス学会の学術集会に参加し、研究成果の発表や研究に関する情報収集を行うことを目的として、参加のための旅費を経費に計上して申請していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い2020年度の日本ウイルス学会の学術集会は来年度に延期となった。また、日本ウイルス学会が延期になった場合に代替の研究発表手段として参加を予定していた別の学術集会も、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い不開催となり、学術集会の参加費用として支出を予定していた経費が全て余剰となった。令和2年度分の経費を使い切るために、当初の計画を変更して消耗品や設備備品の購入を前倒しして購入金額を増やした。しかし令和2年度分の直接経費を完全に使い切ることはできず、直接経費が14011円余ってしまった。令和3年度は所属機関の異動に伴い、研究のための必要経費が増加する可能性が考えられる。令和2年度の余剰分の直接経費を令和3年度に繰り越し、長崎大学に異動した後に研究に必要な消耗品等を購入する費用に充てることで、異動後の研究経費の増加に対応する予定である。また、本年度は昨年度に比べて学術集会の中止や延期が減少し、学術集会への参加の機会が充分にあると考えられる。そのため、繰り越した直接経費を用いて学術集会への参加や論文投稿等を行い、研究成果を積極的に外部に発信することを検討している。
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