2021 Fiscal Year Annual Research Report
時計遺伝子E4BP4によるマクロファージの炎症制御機構の解明
Project/Area Number |
20K22781
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山本 薫 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30885835)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | E4BP4 / 大腸炎 / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
E4BP4は生体の概日リズムを決定する時計遺伝子群の直下に存在し、時計遺伝子群のシグナルを下流へとつなげる出力系時計遺伝子の一つである。昨今、E4BP4はT細胞やNK細胞では、分化・機能発現に必要であることが報告され免疫学の領域で注目を集めている。E4BP4全身ノックアウトマウスは大腸炎を自然発症すること、炎症性腸疾患患者の腸管マクロファージではE4BP4の発現低下がみられることから、E4BP4の発現低下によって過剰な炎症が惹起されるのではないかと考えられている(J Immunol. 2014)。このような背景から、E4BP4がマクロファージを抗炎症に向かわせるM2マクロファージへの極性誘導に大きく関与しているのではないかと仮説を立て研究を着想した。今回の検討では、マクロファージ特異的なE4BP4強発現マウス(M-E4BP4)において、DSS惹起性大腸炎の重症度を軽減させることを確認した。E4BP4 ノックアウトRAW264.7細胞(E4BP4 KO RAW)を用いてRNAシーケンスを行ったところ、E4BP4 KO RAW細胞は、野生型と比べ、抗炎症性マクロファージの発現が低下していることが分かった。さらに野生型マウスに、M-E4BP4マウスから単離したマクロファージを輸注すると大腸炎の重症度が軽減することも分かった。以上より、マクロファージでのE4BP4は、マクロファージを抗炎症マクロファージへと分極誘導させ、大腸炎の重症度を低下させる作用を見出した。 マクロファージを抗炎症へと導く転写因子はほとんど報告されていない上、疫学的にシフトワーカーなど不規則な生活スタイルと炎症性腸新患など自己免疫疾患との関連が報告されている。今回の時計遺伝子E4BP4のマクロファージでの抗炎症作用は、こうした病態を解明する上で興味深い知見となった。
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