2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K22783
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菅田 謙治 熊本大学, ヒトレトロウイルス学共同研究センター, 特定事業研究員 (10650616)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | HTLV1 / TCR / Tax |
Outline of Annual Research Achievements |
CD4T細胞に感染したHTLV1は長い潜伏期間(60年以上)の後、感染者に悪性腫瘍であるATLを惹起する。日本では九州を中心に約100万人のHTLV1キャリアが存在し、その2-5%はATLを発症すると予想されている。HTLV1はCD4T細胞に感染後、ウイルス抗原としてEnv, Gag, Tax, HBZなどを発現する。感染初期に生体内でのHTLV1感染細胞はGag, Pol, Taxを強く発現する。一方でそれらを発現する感染細胞はCTLの標的となり、発現の弱い感染細胞のクローンが形成されていく。感染細胞内でのHBZの発現はGag, Pol, Taxに比べれば弱いものの、感染初期から恒常的に保たれている。これまでHTLV1特異的CTLの解析は腫瘍原性を持つTaxとHBZを中心に行われており、生体内でTax特異的CTLは主に感染初期に、HBZ特異的CTLは感染後期にそれぞれHTLV1感染細胞の増殖をコントロールしていると考えられている。ATLに対する治療としては化学療法やヒト化CCR4抗体などの治療法が試みられ、一部の患者で効果を上げている。しかし、多くのATL患者には有効な治療法が見つかっていない。近年多くのがん患者に対して様々な免疫療法(がんワクチンや免疫チェックポイント阻害薬など)が試みられており、特に直接腫瘍細胞を攻撃する事が出来るCAR(Chimeric antigen receptor)やT細胞受容体(TCR)を遺伝子導入したT細胞の移入療法(Adaptive cell transfer therapy)は一定の効果を挙げている。本研究で申請者は新たな抗がん治療法として効果が期待されるT細胞移入療法に適した高親和性HTLV1抗原特異的TCRの探索を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究で数例のATLやHTLV1キャリアのCTLを用いて1細胞レベルでのTCRレパトアとRNAシークエンシングを行い、TCRや遺伝子発現の情報を得ている。本年度ではそれらの解析を行い、HTLV1 感染者(キャリア、くすぶり型, 慢性型ATL)でのCTLのdominant cloneのclonal expansionの有無を調べた。その結果、健常者(3例):9.8%-19.4%、キャリア(4例):3.4%-13.3%、くすぶり型ATL(3例):5.5%-17.7%、慢性型ATL(6例):10%-64.9%であった。特に慢性型ATLの3症例ではdominant cloneのclonal expansion(39.3%-64.9%)が示された。一方で残りの3症例でそれらは観察されなかった(10%-19.9%)。一方で人工抗原提示細胞の作成のため、K562細胞(HLA null)にレトロウイルスベクターを用いてHLA-A*02:01またはHLA-A*24:02を導入した。HLA導入K562細胞は抗HLA class-I抗体で染色されたため、人工抗原提示細胞としてHLA class-I拘束性ペプチドをパルスしたのちにT細胞と共培養するに使用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では主にATL患者由来のCTLのclonotypeに関して解析を行った。次年度の下記の解析を行う予定である。1、clonotype解析から得られたTCR配列を実際にT細胞株もしくはPrimary T細胞に遺伝子導入し、TCR発現T細胞を人工的に作成する。2、患者のHLAアリルと同じHLA class-Iを発現するK562細胞由来の人工抗原提示細胞にHTLV-1抗原由来ペプチドをパルスし、T細胞と共培養を行う。3、高親和性HTLV1特異的TCRの探索はTCR発現T細胞からのサイトカイン産生能やテトラーでの染色度合いなどTCR-HLA/ペプチドのaffinityを測定し、高親和性の有無を判断する。 また、HTLV1はATLを惹起する一方で慢性炎症疾患のHAMを誘導することが知られている。HAM患者は非常に強いHTLV1抗原に対するT細胞応答を示すことから高親和性TCRを得られることが期待できる。上記に加えて、次年度はATLやキャリアだけでなくHAM由来のHTLV1抗原特異的TCRも含めて同様に解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に直接経費の執行に不備があり、少額の繰越金が発生した。金額が少額なため、請求した次年度の助成金と併せて、【今後の研究の推進方策】で述べたように研究を進めていく予定である。
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