2021 Fiscal Year Annual Research Report
紅麹菌代謝産物によるコレラ菌の持つ病原性の抑制作用に関する研究
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20K22784
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
許 駿 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40881735)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 紅麹菌 / コレラ菌 / 細菌運動性 / 代謝産物 / 感染抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
致死的な下痢を起こすコレラは、グラム陰性桿菌 Vibrio cholerae のうち菌体抗原O1またはO139を有し、コレラ毒素(CTx)を産生する株(コレラ菌)が原因となる。コレラ菌は一本の極べん毛を持ち、その回転によっておよそ100 μm/s の速度で液体中を運動するとされている。経口的にヒトに感染したコレラ菌は、活発な運動能で小腸上部に達しそこで付着・増殖しCTxを分泌する。 一方、糸状菌である紅麹菌(Monascus)は、アジアにおいて発酵食品や天然着色料として活用されている。豆腐を使った沖縄独自の発酵食品豆腐ようでもある。紅麹菌属の特定の代謝物はコレステロールを下げ、人間に他の健康促進効果をもたらす。本課題では、コレラ菌主要病原因子である運動性、ATP産生などに対する紅麹菌代謝産物の抑制効果を検討し、その機序を生物学・生物物理学的手法で解明した。 当研究の結果において、一部の紅麹菌抽出物がコレラ菌の細胞膜に脱分極を誘導する事象を確認した。また、膜電位の低下により、病原細菌の運動性のみならずATP合成に対する抑制効果も観察されていた。以上より、紅麹菌発酵抽出物(MFE)がコレラ菌のATP活性を抑制し、その結果としてCTx分泌、運動性および腸管付着性の抑制に連なることが分かった。MFEはまた、腸炎ビブリオ、緑膿菌、サルモネラ、レプトスピラなどの他の病原菌の運動性を著しく阻害したことが観察された。前述の発見は、紅麹菌発酵抽出物が、予防薬として複数の病原菌によって引き起こされる感染を潜在的に防止し、それらの進行を遅らせ、死亡率および罹患率を低下させる可能性があることを示している。
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Research Products
(2 results)