2020 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病の脳内炎症における制御性T細胞の意義の解明
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20K22789
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大谷木 正貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (70882497)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症疾患 / 神経変性疾患 / 細胞免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)患者の脳では、アミロイドβ(Aβ)やリン酸化Tauの脳内凝集が特徴的な病理変化であり、病変部位には活性化したミクログリアやアストロサイトに加え、種々のT細胞の浸潤がみられる。近年、免疫応答の抑制的制御を司る制御性T細胞(Treg)が組織の恒常性・再生にも積極的な役割を担っていることが報告され、申請者の研究室では、脳梗塞モデルにおいて脳Tregが脳内炎症の慢性期に脳内抗原を認識して増幅、浸潤し、脳機能障害の改善に重要な役割を果たすことを明らかにした。ADモデル脳においてもTregを包括的に解析することで、AD病態におけるTregの意義を明らかに、脳Tregと神経細胞やグリア細胞との関係性や脳Tregの自己抗原の同定など新たな知見の創出や神経変性疾患の新たな治療戦略への導出が期待できる。本年度は、ADモデルマウス脳におけるTregの経時的変化を確認するため、フローサイトメトリーで脳Tregを分離し、数的変化や表面マーカーの解析を行った。また、ADモデルマウスへの抗CD25抗体の投与、あるいはADモデルマウスとDEREGマウス(Foxp3陽性Treg特異的ジフテリア毒素受容体発現トランスジェニックマウス)との交配を行い、ジフテリア毒素投与によるTreg除去後の脳内Aβ沈着を解析した。今後はRNAseqによる遺伝子発現解析を行い、脳Tregの特徴を分析するとともに、グリア細胞との関連も解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、脳Tregの集簇が判明している脳梗塞モデルやEAEにおいて脳・脊髄内に多数のTregが浸潤することを確認した。次にADモデルマウスであるAPPノックインマウスにおいて、従来のAPPトランスジェニックマウスと比較して早期にAβが沈着することを確認したが、脳内炎症に随伴した脳Tregの集積は野生型と比較してもあまり増加していなかった。現在、抗CD25抗体の経静脈ないし脳室内投与によりTregを除去した際の脳内Aβ沈着を免疫組織学的に解析している。また、APPノックインマウスとDEREGマウス(Foxp3発現Treg特異的ジフテリア毒素受容体トランスジェニックマウス)と交配により、ジフテリア毒素投与によりTreg除去できるモデルマウスでのTreg除去後の病理学的変化を解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCD25抗体の経静脈的ないし脳室内投与によるTreg除去またはAPP/DEREGマウスへのジフテリア毒素誘導性Treg除去、あるいはAPPノックインマウスにTregを経静脈的あるいは脳室内投与することで生じる脳内のAβ沈着の変化やグリア細胞の変化を免疫組織化学で評価する。さらにRNAseqにより脳Tregやグリア細胞の遺伝子発現解析を行い、TregがAβ病理に影響を及ぼす分子機序を解明することを目指す。上記で同定された分子機構の解明には、脳スライス培養や初代グリア細胞培養系とTregの共培養系なども用いる予定である。
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