2020 Fiscal Year Research-status Report
大腸腫瘍の発育進展過程における周囲間質の線維芽細胞の役割
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20K22796
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下山 雄丞 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 非常勤講師 (50888518)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸腫瘍 / 腫瘍周囲微小環境 / CAF / 線維芽細胞 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍周囲の間質には線維芽細胞、炎症細胞、内皮細胞などが含まれており、腫瘍の微小環境を形成している。その中で、cancer associated fibroblast(以下CAF)は腫瘍周囲間質における主要な構成成分と考えられ、腫瘍の増殖・浸潤・転移などに関与しているとされているが、未だに一定の見解はない。 そこで、腫瘍の発生初期の「良性腫瘍」という段階では、腫瘍周囲の微小環境は生体の恒常性を維持するため抗腫瘍的に機能するが、腫瘍が「悪性」に進展する中で自らの生存に有利になるように周囲の微小環境を改変していくのではないかと考えた。すなわち、大腸腫瘍に着目すると「良性腫瘍である腺腫の段階において周囲間質の線維芽細胞は抗腫瘍的に機能するが、腫瘍が進展していく中で線維芽細胞がCAFとして機能するようになり、腫瘍の進展を促進させるのではないか」という仮説をたてた。 これまで、腺腫を長期培養するのは困難であったが、三次元培養組織(オルガノイド)を作成することによって腺腫を用いた培養系を確立することができるようになったため、オルガノイドと線維芽細胞およびCAFとの共培養系を用いて、腫瘍と周囲間質の相互作用を実際の生体内に近い状態で再現した。 線維芽細胞と腺腫オルガノイドの共培養においては、オルガノイドの増大が認められ、また、CAFと大腸癌オルガノイドの共培養においてはオルガノイド数の増加が確認され、何らかの液性因子が関与していることが示唆された。さらに、腺腫および大腸癌と線維芽細胞の共培養を行ったのちに線維芽細胞の遺伝子発現をマイクロアレイで解析したところ、細胞外マトリックスタンパクであるペリオスチンの発現亢進が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では大腸腫瘍オルガノイドと線維芽細胞・CAFとの共培養系が重要と考えられる。 共培養の手法として、まずオルガノイドと線維芽細胞を重ねて播種する方法を行うも、組織標本として評価するには有用と思われるも、それぞれの細胞種ごとの検討は困難であった。そこでオルガノイドと線維芽細胞・CAFを混合して培養容器に播種し、培養を行ってから磁気ビーズを用いて細胞分離を行う方法を試みるも、効率が不良であった。 そのため、セルカルチャーインサートを用いて、上層にオルガノイド、下層に線維芽細胞・CAFを播種して液性因子の影響を解析する方法へと切替えた。このように共培養系の確立に時間を要したため、進捗状況はやや遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロアレイによる網羅的遺伝子解析では、オルガノイドから分泌される何らかの液性因子によって線維芽細胞において発現が変動する遺伝子が同定された。その中で、線維芽細胞から分泌される細胞外マトリックスタンパクであるペリオスチンの発現が亢進していることに着目した。筆者らは以前にペリオスチンが細胞死を誘導して潰瘍性大腸炎関連結腸直腸癌の発育進展を抑制することを報告しており、今後同分子をターゲットの一つとして研究を推進していくことも検討している。
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Causes of Carryover |
実験系の確立にやや時間を要したたため、腫瘍の増殖因子の測定などを次年度に行う予定であり、それに用いる試薬などに充てる予定である。
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