2021 Fiscal Year Research-status Report
新規治療法開発を目論んだ多発性骨髄腫におけるMyD88の病態修飾機構の解析
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20K22819
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
中村 元 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (10792666)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / MyD88 |
Outline of Annual Research Achievements |
MyD88(Myeloid differentiation primary response gene 88)はNF-kBシグナル伝達経路関連因子をコードする遺伝子で、MyD88に変異が生じるとNF-kB経路が恒常的に活性化され、リンパ増殖疾患を発症すると考えられている。例えば、原発性マクログロブリン血症(WM)の約90%の症例において、MyD88 L256P変異が認められることが報告されており、IgM MGUSにおける腫瘍化のイニシエーションであることが指摘されている。一方で、その類縁疾患である多発性骨髄腫(MM)においてMyD88が、MMの病態生理に与える影響は不明である。申請者はまず、cBioPortal for Cancer Genomicsを通じ205例のMM患者におけるMyD88遺伝子変異の割合を検討したところ、わずか1例にL256P変異を認めるのみであった。一方で、MMにおけるGene Expression Omnibusのデータセット(GSE24080)において、MyD88の発現多寡で2群に割り付けてKaplan-Meier法により全生存期間と無イベント生存期間を検討したところ、いずれにおいてもMyD88高発現群において有意に予後不良であることを見出した。したがって、遺伝子変異の頻度が低くとも、MyD88が何らかの形でMMの病態生理に関与している可能性が示唆される。近年、多くの新規MM治療薬が臨床導入されているが、再発難治例は未だ予後不良であり、治癒を期待できる治療薬の開発が急務である。そこで今回、治療ターゲットとしての可能性を念頭に、MyD88のMM細胞における機能を解析することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MyD88阻害剤であるST2825が複数のMM細胞株において濃度依存的なアポトーシスを誘導することを明らかにした。一方で、RNAi法を用いたMyD88のknock downでは細胞増殖能の低下やアポトーシス細胞の増加は認められなかった。その部分の原因究明に予定外の時間を費やしており、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ST2825暴露とRNAi法によるMyD88のknock downにおいて、どのような遺伝子発現の変化が生じるか、PCR arrayを用いた検討を予定している。その結果ST2825の新たなターゲットが明らかにできれば、同薬剤がMMにおける新規治療薬の候補となる可能性があり、in vivoでの検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
上述の研究計画の遅れに伴い、in vivoの実験計画の開始が遅延しており、そのため次年度使用額が発生している。なお、次年度使用額は試薬等の購入に充てる予定である。
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