2020 Fiscal Year Research-status Report
膵癌のクローン進展におけるDNAメチル化の不均一性と可塑性
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20K22821
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
林 玲匡 杏林大学, 医学部, 講師 (40735396)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 膵癌 / DNAメチル化 / 腫瘍不均一性 / クローン進展 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究結果から、癌は分子遺伝学的に進化し不均一性な集団を形成することが示されている。本研究は、難治性癌の代表である膵癌において、主要なエピゲノムの変化であるDNAのメチル化に注目し、その腫瘍内の不均一性を探索するものである。そして、DNAメチル化の不均一性が癌の分子遺伝学的進化や組織形態像の変化とどのように関連するかについて解明することを目的とする。 現在、杏林大学付属病院病理部に保管されている検体を用いて、組織形態像の不均一性とDNAのメチル化について検討中である。外科的切除を受けた膵癌患者約10年分の組織標本を全てレビューし、腫瘍内により多様な組織形態像を認める浸潤性膵管癌症例 10例を選定した。選定された症例を用いて、異なる形態像を含むようにホルマリン固定パラフィン(FFPE)標本からマクロダイセクションを実施し、各症例10箇所程度からDNA抽出を行った。現在は得られたDNAのクオリティチェックを行っており、今後DNAメチル化の網羅的解析を行う予定である。 共同研究先であるメモリアル・スロンケタリングがんセンター(米国)の網羅的DNAメチル化解析結果からは、終末期膵癌において、DNAメチル化がより不均一な症例と比較的均一な症例が存在することが示唆されている。現在、同時に行った体細胞変異の網羅的解析(全エキソン解析および全ゲノム解析)の結果から症例ごとに癌の進化系統樹を作成し、そのパターンがDNAメチル化に与える影響について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膵癌手術症例の組織標本を広くレビューすることにより、組織学的に不均一な症例を選定出来ている。同症例のFFPE標本から、マクロダイセクションを用いてDNA抽出までは完了しており、概ね予定通り研究は進展している。現在はDNAのクオリティチェックを行っており、よりDNAクオリティの保たれているサンプルを30-40程度、網羅的DNAメチル化解析に提出の予定である。 共同研究先であるメモリアル・スロンケタリングがんセンターでは、解析に必要な網羅的シーケンスは概ね完了しており、マッピング後、現在はより高次な解析を進めている。同センターと定期的にwebカンファレンスを行い、緊密な連携を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的DNAメチル化解析を行い、組織形態像とDNAメチル化の不均一性の関連を検討する予定である。具体的には、メチル化変動領域を抽出して、各サンプルの層別化を行う予定である。これにより、各症例ごとに腫瘍内のDNAメチル化が不均一性を確認するとともに、組織形態像の類似性によって症例間で共有されるようなメチル化領域が存在するのかについても探索する。 これらの結果と共同研究先のメモリアル・スロンケタリングがんセンターの研究結果を相互検証し、分子遺伝学的変化や組織形態像の変化に重要であると考えられるDNAメチル化領域を特定するとともに、必要ならば培養細胞を用いた分子生物学的な実験も検討する。
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Causes of Carryover |
DNAの網羅的解析は次年度に行う予定であり、高額な費用が必要なため、今年度はDNA抽出のための試薬購入にとどめた。
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