2020 Fiscal Year Research-status Report
シスプラチン耐性肺癌における免疫プロテアソーム阻害剤治療の開発
Project/Area Number |
20K22828
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
庄司 哲明 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10881021)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 肺癌 / 薬物耐性 / シスプラチン / 免疫プロテアソーム / 免疫プロテアソーム阻害剤 / ネクロトーシス / オートファジー / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プラチナ製剤に耐性となった肺癌患者の新規治療法としての免疫プロテアソーム阻害剤の臨床応用が目的である。 先行する臨床研究では著効例は存在するものの、その割合が少ないことが報告されており、本研究の課題の一つは適切な症例を選択するためのバイオマーカーの探索である。シスプラチン耐性肺癌細胞においては免疫プロテアソーム発現が亢進し、それによるキモトリプシン様活性が増加していることが判明した。また免疫プロテアソーム阻害剤の感受性がシスプラチン耐性化にともない亢進する肺癌細胞株においてはキモトリプシン様活性もシスプラチン耐性化にともない大きく上昇することが判明している。そのほかに臨床応用可能なバイオマーカーの探索としてウエスタンブロット法によってサイクリンD、CDK1をはじめとした細胞周期調節因子、CHOP、eIF2αをはじめとした小胞体ストレス関連タンパクを検討した。免疫プロテアソーム阻害剤投与によりそれらの発現量は変化し、免疫プロテアソームの効果判定になりうるものの、事前に症例選択のバイオマーカーとしての有用性は乏しいことが判明した。今後はAtgタンパク群をはじめとしたオートファジー関連因子の検討を進めていく。 免疫プロテアソーム阻害剤の抗腫瘍機序としてネクロトーシスが指摘されており免疫チェックポイント阻害剤との併用の有用性を予測しているが、シスプラチン耐性肺がん細胞においても免疫プロテアソーム阻害剤はネクロトーシスを誘導することをRIPK3をはじめとしたネクロトーシス関連因子の発現によって確認した。 北海道大学病院で保存されているヒト臨床検体を用いた免疫プロテアソームサブユニットの発現状況を免疫組織染色によって検討することとしており、すでに免疫組織染色を終え、今後は解析をすすめていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の一番の目的はin vitroで証明されている現象の動物実験による検証である。ヌードマウスにおいてin vivoで作成したプラチナ系製剤耐性肺癌細胞を用いた検討を予定した。しかしコロナ禍による中断を余儀なくされ、プラチナ系製剤耐性肺癌細胞の作製ができていない。今後はシスプラチン耐性化を非小細胞肺癌細胞株H1299および小細胞肺癌株SC3に絞って誘導し、検討をすすめることとする。 それ以外の検討課題についてはおおむね予定したスケジュール通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験が遅れているため、今後は使用するプラチナ製剤をシスプラチンに、使用する細胞株を非小細胞肺癌細胞株H1299および小細胞肺癌株SC3に絞って検討を進めていく。ヌードマウスにそれらの肺癌細胞を移植し、シスプラチンを長期暴露することでin vivoでシスプラチン耐性肺癌細胞を作成する。その細胞を用いてすでにin vitroで作成したシスプラチン耐性肺癌細胞で観察された各種現象を検討していく。 免疫プロテアソーム阻害剤がシスプラチン耐性肺癌細胞においてネクロトーシスを誘導することが判明したので、免疫チェックポイント阻害剤との併用治療の有用性についてマウス実験を行う準備を進める。 ヒト臨床検体の免疫組織染色による検討については、免疫組織染色をほぼ終えたため、データ収集および解析を行っていく。 Atgタンパク群をはじめとしたオートファジー関連因子をプラチナ系製剤耐性肺癌における免疫プロテアソーム阻害剤の効果予測のためのバイオマーカーとしての有用性を、ウエスタンブロット法を用いて検討していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で動物実験を始めとして実験に遅れが生じているため、未使用額が発生した。できなかった実験は次年度に行う予定であるため、繰り越して使用する予定である。
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