2021 Fiscal Year Annual Research Report
中性アミノ酸輸送体LAT1を標的とした新規がん放射線療法の開発へ向けた基礎的研究
Project/Area Number |
20K22830
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
房 知輝 山形大学, 医学部, 助教 (90878141)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | がん / 中性アミノ酸 / LAT1 / 放射線 / 分岐鎖アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、様々ながん種において糖代謝だけでなくアミノ酸代謝にもリプログラミングが生じており、アミノ酸代謝を標的としたがん治療法の研究が進められている。中性アミノ酸輸送体L-type amino acid transporter 1 (LAT1)はNa+非依存性にフェニルアラニンやバリンおよびロイシンなどの中性アミノ酸の細胞内への取込みに働く。さらに、LAT1は様々ながん種で非がん部に比べて発現量が増加し、悪性度との間に相関が認められる。申請者は、放射線照射をうけたヒト膵臓がん細胞株においてバリンやフェニルアラニンなどの中性アミノ酸量が増加することを明らかにした。放射線は生存したがん細胞の代謝を亢進させることから、放射線によるエネルギー代謝亢進に中性アミノ酸代謝も寄与していると推察し、本研究では中性アミノ酸輸送体LAT1を標的とした放射線増感の可能性について検討した。 はじめに、LAT1特異的阻害剤JPH203がアミノ酸取込みに与える影響を評価したところ、JPH203は細胞内中性アミノ酸量を低下させたことからLAT1阻害効果を確認した。次に、細胞の放射線感受性に与える影響を評価したところ、JPH203は放射線感受性を有意に増強した。続いて、この放射線感受性増強メカニズムを明らかにすることを試みたところ、JPH203併用処理はX線照射単独処理により減弱されるmTOR活性をさらに抑制した。mTOR活性は細胞増殖能に重要であることから、細胞老化を評価したところ、JPH203処理はX線照射により増加するp21発現量ならびにSA-βgal陽性率をさらに増加させた。このことから、JPH203はX線照射後のmTOR活性を抑制することで細胞老化を誘導し放射線感受性を増強することが示唆された。以上、本研究はLAT1を介した中性アミノ酸代謝を標的とした放射線療法の可能性を提示した。
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Research Products
(3 results)