2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞間相互作用に由来するがん細胞多様性の抽出と創出機構の解明
Project/Area Number |
20K22839
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小嶋 泰弘 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (00881731)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 空間トランスクリプトーム / 一細胞RNA-seq / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞が示す細胞状態の多様性は、現代的ながん治療の大きな障害となってきた。それゆえ、その多様性の理解と制御はがん治療の予後の大きな改善につながることが期待される。1細胞ごとの網羅的な遺伝子発現を定量化する1細胞トランスクリプトーム観測は、がん細胞の多様性を網羅的に捉える強力な手段である一方で、細胞間相互作用が期待される近傍の細胞等の情報が失われており、生体内のがん組織においてがん細胞の多様性をもたらす外的要因の理解には困難があった。そこで、本研究では、1細胞トランスクリプトーム観測と遺伝子発現の空間分布を網羅的に補足する空間トランスクリプトーム観測との統合的解析から非細胞自律的ながん細胞の多様性をデータ駆動的に抽出する。さらに、細胞間相互作用を担う分子機構として重要な位置を占めるリガンド-受容体ペアについて、抽出された多様性への寄与をデータ駆動的に推定し、その寄与を実験的に検証する。これによって、細胞間相互作用に起因するがん細胞の多様性創出機構を紐解き、その制御に関わる分子機構を解明することを目的とした。当該年度では、現段階では一細胞レベルとはなっていない空間トランスクリプトームを一細胞RNA-seqにより得られている一細胞レベルの発現プロファイルに分解するための方法論の開発を行なった。本手法では、近年発展の著しい深層学習の技術を用いることにより、これまでの細胞種レベルでの発現プロファイルの対応付から粒度を引き上げて、一細胞ごとの各空間座標における存在比を推定することを可能にした。これにより、公開データであるマウスの脳領域への適用では、既存の方法論より精度の高い対応付けを行うことができることを確認している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、空間トランスクリプトームと一細胞トランスクリプトームの対応づけを行うための新手法の開発を行なった。これには、近年発展の著しい深層学習の技術を用いることにより、これまで行われていた細胞種レベルの分解の粒度を向上させ、一細胞レベルの分解を可能とする方法論の作成を行なった。マウス脳領域の公開データへの適用により正しい細胞種の空間パターンの再構築を確認している。また、本データに対する細胞種レベルでの対応づけを行う手法との比較を行なったところ、一細胞RNA-seqの発現プロファイルの各空間座標への割り当てにより高精度な発現プロファイルの再構築に成功していた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、一細胞レベルで推定された細胞位置をもとにし、近傍細胞の存在により各細胞種の発現プロファイルを回帰することにより、それらの関係性から潜在的な細胞間の相互作用を推定するための方法論の作成を行う。これにより、データ駆動的に相互作用をする細胞間の関係性を明らかにし、それらの発現プロファイルの解析から相互作用を担う分子機構の解明を行う。
|