2020 Fiscal Year Research-status Report
発酵食品の腸-内臓連関を介した糖代謝改善機構の解明-マルチオミクス解析を用いて-
Project/Area Number |
20K22881
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
岡村 拓郎 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (00885163)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 発酵食品 / 腸内細菌 / ショットガンメタゲノム解析 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
食習慣の欧米化 (脂質・ショ糖の過剰摂取)によって引き起こされる腸内細菌の乱れ(Dysbiosis)や内臓脂肪組織の慢性炎症は糖尿病の成因の一つである。本研究ではショットガンメタゲノム解析とメタボローム解析から得られた包括的データを統合的に解析することで、発酵食品の標的腸内細菌・腸内代謝産物を同定することで発酵食品の“腸―内臓脂肪連関”による抗炎症作用を明らかにする。 味噌を発酵食品の代表として用い、B6/Jマウス(♂・8週齢、各群10匹)に12週間高脂肪高ショ糖食±味噌食を給仕した。味噌投与群では有意な耐糖能障害や内臓脂肪肥満の改善を認めたほか、便、内臓脂肪中の短鎖脂肪酸濃度が有意に増加した一方で、血清、内臓脂肪中の飽和脂肪酸濃度が有意に低下した。便のショットガンメタゲノム解析において、短鎖脂肪酸の生成に関わるAlloprevotella属を含むPrevotellaceae科やChristensenellaceae科が増加していた。さらには、味噌投与群の空腸の遺伝子発現をRT-PCRで解析したところ、長鎖脂肪酸トランスポーターであるCd36や短鎖脂肪酸レセプターであるFfar2やFfar3の発現が味噌群で有意に低下していた。 さらにヒト血球より分離した2型自然リンパ球に飽和脂肪酸であるパルミチン酸を投与したのち、マルチカラーフローサイトメトリーを用いたサイトカインアッセイでは有意にIL-5及び13陽性細胞が減少することが明らかとなった。 これらの結果から、発酵食品は食の欧米化によるDysbiosisを改善することで栄養吸収に関わる小腸の遺伝子発現を改変し、種々の代謝改善作用を発揮することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り動物実験および細胞実験を実施できている。 具体的には動物実験で味噌投与群では有意な耐糖能障害や内臓脂肪肥満の改善、便、内臓脂肪中の短鎖脂肪酸濃度の増加、血清、内臓脂肪中の飽和脂肪酸濃度の低下を認めた。さらに便のショットガンメタゲノム解析において、短鎖脂肪酸の生成に関わるAlloprevotella属を含むPrevotellaceae科やChristensenellaceae科が増加していたほか、味噌投与群の空腸では長鎖脂肪酸トランスポーターであるCd36や短鎖脂肪酸レセプターであるFfar2やFfar3の発現が味噌群で有意に低下していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は発酵食品が食の欧米化によるDysbiosisを改善することで栄養吸収に関わる小腸の遺伝子発現を改変し、種々の代謝改善作用を発揮することが明らかとした。 申請者は内臓脂肪組織内の炎症を惹起する主要な物質であることが予想される脂肪酸を単独で内臓脂肪組織より採取したILC2及びMφに投与するとIL-5/IL-13の分泌が障害されることを先行研究で明らかにしている。今後は短鎖脂肪酸及び飽和脂肪酸を同時に投与するとILC2のIL-5/IL-13の産生が増加し、抗炎症作用が増強することを明らかにする。
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