2020 Fiscal Year Research-status Report
美白成分による自己免疫性白斑誘発の作用機序の解明とその予測法の開発
Project/Area Number |
20K22885
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
片平 泰弘 東京医科大学, 医学部, 助教(特任) (80881458)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 自己免疫性白斑症 / ロドデノール / メラノサイト / ハプテン |
Outline of Annual Research Achievements |
感作性評価法として、ヒト単球細胞株THP-1上の接着分子CD54と共刺激分子CD86発現増強をFACSで測定するh-CLAT法が報告されているが、ロドデノール(RD)はこの方法では陰性であった。そこで、メラノサイトでの代謝も考慮するため、プライマリーのメラノサイトの代わりに、当研究室で保有するメラノーマ腫瘍(ヒトSK-MEL-13、28、37、マウスB16F10、B16F1など)を用いて、いわゆるトランスウェルの上のインサートにScaffoldを用いて3次元培養し、その下のプレートのウェルにTHP-1細胞を共培養する系を構築した。これらのメラノーマ腫瘍の中で、SK-MEL-37を用いると、白斑誘発美白成分としてRDとラズベリーケトンの刺激で、FACS解析により濃度依存的にTHP-1細胞上でCD86発現増強が見られたが、通常のh-CLATではCD86増強が検出されなかった。RDを用いた時、共培養系では、刺激1時間後の早期の時間をピークに、活性酸素種(ROS)の産生増強が見られたが、h-CLATでは検出されなかった。次に、ROSの除去剤であるN-アセチル-L-システインの処理により、共培養系でのRDによるCD86発現増強が有意に阻害されこともわかった。一方、非白斑誘発美白成分であるビタミンCやトラネキサム酸では、濃度を上げてもこの共培養系でもCD86発現増強は見られなかった。以上の現象は、ヒトケラチノサイトHaCaT細胞を用いた場合は見られなかった。これらの結果は、RDの白斑誘発性には、いわゆるハプテンとしてDCの成熟化を誘導し、そのマーカーである副刺激分子CD86の発現を増強し、CD4+T細胞を活性化する作用機序が関与している可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトメラノーマ腫瘍SK-MEL-37細胞を用いて、ロドデノールによる樹状細胞でのCD86発現増強を検出できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に開発したヒトメラノーマSK-MEL-37とヒト単球細胞株THP-1を用いた3次元の共培養系では、ロドデノール(RD)を加えると、SK-MEL-37の細胞死が観察された。そこで、RDで細胞死を誘導することがTHP-1細胞表面上に副刺激分子で樹状細胞の成熟化マーカーであるCD86の発現を増強するのに重要であるかについて検討する。そのため、SK-MEL-37をRDまたは溶媒であるDMSOで処理した上清、SK-MEL-37を凍結融解した培養上清、ヒトメラノサイトHaCaT細胞にRD処理した上清、HaCaT細胞を凍結融解下上清などを調製し、THP-1細胞に加えいわゆるh-CLAT法でCD86発現増強が誘導できるか調べる。次に、RDで処理したSK-MEL-37細胞の上清でもCD86発現を増強するなら、その上清中に入っているCD86発現を増強する分子の同定を2次元電気泳動後、質量分析法により網羅的に解析する。発現量の高い順に、その組換え精製蛋白質またはその中和抗体を購入し、CD86発現増強への効果を調べ、RDがCD86発現増強を誘導する分子機序を明らかにする。このRD誘導性白斑症を発症した患者は、白斑局所へのCD8+T細胞の浸潤が報告されている。そこで、上記の網羅解析の中で、CD8+T細胞の分化誘導を促進することが知られている分子についても発現量の高い順に選び、その関与を検討する。さらに、白斑誘発性の感度を上げるため、ヒトメラノーマSK-MEL-37の代わりに、ATCCより購入したヒトメラノサイトをhTERT遺伝子導入で不死化したメラノサイトを用いて、さらに感受性の高い共培養系ができないか検討する。
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Causes of Carryover |
端数をピッタリ合わすことが難しいため、次年度使用額が生じた。次年度請求額と合わせて、消耗品の購入に充てる。
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