2020 Fiscal Year Research-status Report
PD-1シグナル阻害誘導免疫関連副作用の病態解明と特異的治療法の開発
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20K22891
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 亮多 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (90649667)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | PD-1 / irAE / IL-6 / CD8 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤であるPD-1阻害薬により免疫は活性化し、がん免疫を増強する。一方で、特有の副作用(免疫関連副作用)も生じ得る。 免疫関連副作用は、あらゆる臓器で発症し得るが、皮膚に生じる頻度が最も高い。 本研究では、PD-1シグナル阻害下誘導乾癬様皮膚炎の特徴、および特異的な治療標的を探索した。 まず、抗PD-1抗体を投与された悪性黒色腫患者で乾癬様皮膚炎を発症した患者と、通常の乾癬患者の、皮膚組織を比較した。その結果、PD-1シグナル阻害誘導乾癬様皮膚炎の特徴として、表皮内にCD8 T細胞が優位に浸潤していることを見出した。また、血清では、免疫関連副作用を未発症例よりも、IL-6が上昇していることを明らかにした。 そこで、Toll様受容体7アゴニストであるイミキモド誘導乾癬様皮膚炎モデルマウスを用いて、病態を解析した。PD-1欠損マウスもしくは抗PD-1抗体治療マウスに乾癬様皮膚炎を惹起した場合、野生型マウスに比べ、皮膚炎が悪化し、さらにCD8 T細胞上のみでPD-1を欠損させたマウスでも同様に、皮膚炎は増悪した。そして、ヒトと同様に、表皮内CD8 T細胞浸潤が増強している特徴を有していた。また、抗IL-6受容体抗体による治療実験では、PD-1全欠損マウス、CD8 T細胞上PD-1欠損マウスともに、悪化した乾癬様皮膚炎が、野生型マウスでの乾癬様皮膚炎と同程度にまで改善した一方、野生型マウスの乾癬様皮膚炎では治療効果は観察されなかった。また、PD-1欠損マウスの乾癬様皮膚炎中では、特に表皮内の血球系細胞でのIL-6発現が増強しており病態への関与が示唆された。 本研究により、PD-1シグナル阻害誘導乾癬様皮膚炎は、PD-1シグナルが遮断されたCD8 T細胞の活性化と表皮内浸潤によって悪化し、IL-6が病態を悪化させる要因であり、かつ治療標的となり得ることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾癬様皮膚炎(irAE)の病態を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は同様にモデルマウスを用いて自己免疫性肝炎(irAE)の病態にアプローチし、IL-6標的療法が重症肝炎症例へ有効な治療となり得るかどうかについて探索する。
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