2020 Fiscal Year Research-status Report
神経ガイダンス因子による神経-免疫-代謝連関を介した組織機能維持機構の解明
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20K22900
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 由光 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教 (70882645)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | セマフォリン / 交感神経 / 代謝 / 造血 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系、免疫系、代謝系などのシステム間相互作用に着目した研究が近年注目を集めている。本研究ではセマフォリンを介した神経-免疫-代謝連関の制御機構の解明を目的として、骨髄と脂肪組織を対象に解析を行なった。骨髄に関して、申請者はすでにSema6d-/-マウスにおいて骨髄内交感神経分布が亢進すること、同マウスにおいて高脂肪食負荷時にβ3アドレナリン受容体を介した交感神経シグナルにより肥満抵抗性、ミエロイド造血の亢進をきたすことを明らかにしている。そこで本研究では骨髄内において上記表現系に寄与する責任細胞群の同定および機能解析を行った。LepR-Cre;Sema6dfl/fl、Prx1-Cre;Sema6dfl/fl、Tie2-Cre;Sema6dfl/fl、VEcad-CreERT2;Sema6dfl/flマウスなどのコンディショナルノックアウトマウスを作製し、解析を行なったところ、Cxcl12-abundant reticular (CAR)細胞を中心とする骨髄ニッチ細胞におけるSema6Dの欠損により、著明な肥満抵抗性を呈することが明らかとなった。脂肪組織に関して、申請者はすでにSema6d-/-マウスにおいて高脂肪食負荷時に肥満抵抗性を示すだけでなく、褐色脂肪組織の熱産生遺伝子の発現上昇などカヘキシア様の表現系を呈すること、寒冷刺激時の褐色脂肪組織における熱産生が亢進することなどを明らかにしていたが、今回新たに、Sema6d-/-マウスにおいて寒冷刺激時の皮下脂肪熱産生応答であるベージュ化が抑制されることを発見した。さらに、Ucp1-Cre;Sema6dfl/flマウスにおいても同様の表現型を認めたことから、脂肪細胞に発現するSema6Dが褐色脂肪組織、皮下白色脂肪組織の熱産生応答を制御する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄の表現型の解析においては当初の予定通りコンディショナルノックアウトマウスの解析を行い、表現型に寄与する細胞群の絞り込みに成功している。脂肪組織の表現型の解析においても、全身性のSema6D欠損で皮下脂肪のベージュ化が低下するという新たなデータを得るとともに、同時に作製を進めていた脂肪細胞特異的Sema6D欠損マウスでも同様の表現型を認め、脂肪細胞のSema6Dが熱産生応答を制御するという新たな知見を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄に関しては骨髄ニッチ細胞におけるSema6Dシグナルがどのように骨髄内交感神経分布を制御するのかを透明化技術を用いて三次元的に解析する。さらに、急性の造血応答への寄与を検討する。脂肪組織に関してはSema6d-/-マウス由来primary adipocyteを用いて褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞への分化能評価や機能アッセイを行うとともに、in vivoにおけるSema6D欠損に伴う熱産生低下の全身代謝や免疫応答への影響を検討する。また、Sema6d-/-マウスの脂肪組織における交感神経分布を免疫染色で評価し、Sema6d-/-Adrb2-/-、Sema6d-/-Adrb3-/-マウスなどの表現型と照らし合わせることで、脂肪組織内の交感神経と脂肪細胞の相互作用におけるSema6Dの寄与を検討する。
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Causes of Carryover |
解析を行う予定であった遺伝子改変マウスの作製が予定より遅れたため。
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