2020 Fiscal Year Research-status Report
PIP3関連分子異常による原発性免疫不全症の病態解明と新規治療法開発への応用
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20K22916
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
關中 佳奈子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 小児科学, 救急調整官 (00871344)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | APDS / AKT-FOXO1シグナル伝達経路 / Bim / p27Kip1 / ERK |
Outline of Annual Research Achievements |
APDS, APDS-Lの免疫不全およびリンパ組織増殖の発症機序を解明するため、下記の解析・検討を行った。 a) AKT-FOXO1シグナル伝達経路の異常による免疫不全発症機構の解明 APDS, APDS-L患者リンパ球を用い、FOXO1のリン酸化亢進と免疫不全重症度の相関を検討した。APDS, APDS-L患者リンパ球において、FOXO1で転写されるBim, FasL, TRAIL, p27Kip1,p130などの蛋白発現をウェスタンブロット法により解析した。免疫不全症を呈するAPDS、APDS-L患者のリンパ球ではFOXO1のリン酸化が亢進しており、FOXO1の下流の分子のうち、特にBim,p27Kip1の発現亢進が認められたことから、免疫系細胞のアポトーシス亢進や細胞周期の異常がAPDS,APDS-L患者の免疫不全発症に寄与している可能性が考えられた。 b) ERK経路異常活性化によるリンパ組織増殖症発症機序の解明 リンパ節腫脹を呈したAPDS患者及びリンパ節腫脹を呈さないAPDS-L患者のリンパ球で、ERKの発現を解析した。APDS患者のリンパ球ではERKの発現が亢進していた。一方で、APDS-L患者のリンパ球ではERKの発現異常は明らかではなかった。特に、APDS2(PIK3R1機能喪失型変異)患者のリンパ球ではERKの発現が亢進が著明であった。APDS2患者ではリンパ腫(多くはB細胞性リンパ腫)の発症頻度が高いことが複数の論文で報告されており、ERKの発現異常がリンパ腫の発症に関与している可能性があると考えられた。これらの研究成果について、論文投稿の準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者検体を用いた分子生物学的な解析についてはおおむね予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
APDS患者リンパ球でのFOXO1の転写活性、細胞内局在の検討を行い、免疫不全症の発症機序を解明する。FOXO1のリン酸化レベルと免疫不全症状との相関関係を明らかにする。 患者リンパ球から樹立した活性化T細胞のRNAシークエンスを行い、mRNAプロファイリングにより、免疫に関与する変動遺伝子群を抽出する。 APDSのリンパ組織増殖症発症機序の解明のため、ERK経路の下流分子であるc-MYC, MEF2D,MEF2Cなどの発現を解析し、APDS患者のリンパ組織増殖症の発症にERK経路の異常活性化が関与していることを明らかにする。 また、APDSの免疫不全症状・リンパ組織増殖症に対する新規治療標的として、FOXO1及びERK、その下流の分子群に着目し、それぞれの阻害剤や分子標的薬を用いて、in vitroでその効果を検証する。
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Causes of Carryover |
国内外への学会参加、研究打ち合わせ等がオンラインでの実施になり、旅費が発生しなかった。実験補助の必要な解析は次年度に行うことにしたため、必要な試薬購入・人件費を次年度に繰り越すこととした。
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