2020 Fiscal Year Research-status Report
Trigger-based AF発生基盤の構築に関わるメカニズムの解明
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20K22924
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
相本 恵美 東邦大学, 薬学部, 助教 (20756358)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 心房細動 / 容量負荷 / リモデリング / アルドステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
動静脈瘻による慢性容量負荷とアルドステロン負荷を与えたラットでは、数時間持続する心房細動や複数のトリガーが短時間に発生する特徴的な現象を認めることを当研究室の実験で明らかにしている。本モデルラットの心房細動持続化の機序を明らかにするため、慢性容量負荷を与えたラットでmRNA発現量に大きな変動を認めたTRPCチャネルに着目した。初年度は、動静脈瘻ラットにおけるTRPCチャネル阻害薬の急性効果を検討することで、リモデリング心房のイオンチャネル動態に対するTRPCチャネルの関与を検討した。次に、モデル作製時から持続的に阻害薬を投与することで、慢性容量負荷およびアルドステロン負荷によるリモデリング形成過程におけるTRPCチャネルの関与を検討した。 動静脈瘻ラットに対するTRPCチャネル阻害薬pyrazole-3の急性投与は、最高用量においても心電図指標や心房有効不応期に変化を与えず、心房細動の持続時間に影響しなかった。一方、リモデリング形成過程における持続的なpyrazole-3投与は、アルドステロン負荷・動静脈瘻ラットで観察される心房期外収縮および自発的な心房細動の発生率を低下させた。また、バーストペーシングにより誘発した心房細動の持続時間を有意に短縮させた。さらに、アルドステロン負荷・動静脈瘻ラットでは短い周期の心房細動を認めたが、pyrazole-3を持続投与したラットでは細動周期が延長する傾向を認めた。一方で、持続的なpyrazole-3処置は心電図指標や有効不応期に影響しなかった。 以上の結果より、TRPCチャネルの活性化はリモデリング心房のイオンチャネル動態への関与は低く、催不整脈基質を形成するリモデリング過程において重要な役割を果たす可能性が示唆された。次年度は、TRPCチャネルの下流に位置するNFATに着目し、本モデルラットのリモデリング形成過程の検討をさらに進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の進捗はやや遅れているが、それは主に以下の2つの理由によるものである。 1)COVID-19の感染拡大の影響により動物実験の実施が困難な期間が生じたことや、研究活動を制限せざるを得ない状況が継続していること 2)薬物の持続投与に用いている浸透圧ポンプの作動不良により、モデル動物の作製に失敗する事例が続いたこと 2)の事由に関しては、検証の末に溶媒の粘度が高いことが主な原因であることが判明し、溶媒の粘度を低下させるように工夫を加えることで解決した。そのため、次年度は問題なくモデル動物の作製が出来ると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、リモデリング形成過程に加えてリバースリモデリング効果について検討することを予定していたが、進捗状況がやや遅れていることや2021年度も継続してCOVID-19により研究活動が制限されることが予想されることから、次年度では特にリモデリング形成過程の解明に焦点を絞って取り組む。具体的には、初年度の検討で明らかにしたTRPCチャネルの活性化の関与に着目し、その下流に位置するNFATの関与を間接的NFAT機能抑制薬fingolimodを用いてリモデリング形成過程への関与を明らかにすることを計画する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響による研究活動の制限やオンラインでの学会参加により旅費が発生しなかったことにより、次年度使用額が生じた。次年度は、COVID-19の状況を鑑みつつ、可能な範囲で迅速に研究計画を実施する。
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Research Products
(1 results)