2020 Fiscal Year Research-status Report
肺由来生体・生物材料を用いた多能性幹細胞から肺オルガノイドの創生
Project/Area Number |
20K22931
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
北村 知嵩 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00882044)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 肺オルガノイド / 脱細胞化 / 細胞外マトリックス / 胚性幹細胞 / 3次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、各種臓器に由来する細胞外マトリックスを利用した臓器再生が試みられており、呼吸器領域における報告も散見される。そこで本研究では、多能性幹細胞(ES細胞)から肺由来脱細胞化マトリックス(LM)を用いた3次元培養により肺機能を有する肺オルガノイドの分化・創出・解析を目標とした。 初年度(令和2年度)は、まず、成獣マウス由来のLMと、シート状に加工したLMSheetの調製条件を検討した。成獣マウスの肺をSDSにより脱細胞化処理後、LMを調製した。LMを固定後、凍結切片を作成し、H&E染色により細胞除去処理を確認することができた。次に、LMをシート状に細切加工し、厚みの異なるシートを調製した。厚さの異なるLMSheetを用いて多能性幹細胞(マウスES細胞)の3次元培養を行った結果、シートの厚みによりES細胞の生着率およびオルガノイドへの分化誘導率が異なるという新しい知見を得ることができた。さらに、それらの細胞を用いて各種肺細胞マーカー(1型肺胞上皮細胞:AQP5、2型肺胞上皮細胞:SP-C、クラブ細胞:CC10など)の遺伝子発現を精査した結果、LMSheetを用いた場合、各種肺細胞への誘導亢進の傾向を認めた。 今後は、上記で得られた肺オルガノイドの更なる解析や、マウス胎児由来未成熟肺細胞などを利用して分化誘導条件の更なる条件検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づき、肺由来脱細胞化マトリックス(LM)を用いた多能性幹細胞(マウスES細胞)の3次元培養を行った結果、LMの分化誘導への有効性が示されている。また、LMをシート状に細切加工したLMSheetの厚みにより生着率や分化誘導率が異なるという期待以上の研究成果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(令和3年度)では、現在進行中である肺由来脱細胞化マトリックス(LM)を用いた多能性幹細胞(マウスES細胞)の3次元培養を行い、形態学的および組織学的解析を更に進めて行く予定である。また、マウス胎児より未成熟肺細胞(ULC)を調製し、LM・ULCを用いてマウスES細胞と3次元共培養することで、さらなる肺細胞への分化誘導とオルガノイドの創出を検討する。 解析では、各種肺細胞マーカーの遺伝子発現やwhole mountによる細胞免疫染色により精査する。更に、電子顕微鏡観察による肺微細構造の解析を行うことで、立体構造と機能を兼ね備えた肺オルガノイドの創出を検証し、形成過程で各種肺構成細胞の発現をリアルタイム解析することにより、肺の再生・発生に寄与する基礎的データを構築してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画の2年目(令和3年度)において、肺オルガノイド形成に関わる種々の遺伝子変移を網羅的に解析する目的で、次世代RNAシークエンスなど受託研究費、および各種抗体などの購入費用の発生が予想された。本年度は主に消耗品(培養液、培養用プラスチック器具、分子生物学的試薬)の購入に研究費を使用した。その際、次年度に備え、必要最低限の量を計画的に購入し繰越金を捻出したため。
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