2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22953
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小原 隆史 岡山大学, 大学病院, 医員 (00880840)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | CORM / 小腸グラフト / 小腸移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、腸管機能不全の患者の予後は改善したが、長期にわたる静脈栄養管理は生活の質を低下させ、合併症は時に致死的である。小腸は他の臓器よりも虚血再灌流障害に弱く、移植後も急性・慢性拒絶反応が高い傾向にあることから、移植が困難な臓器であるが、小腸移植でしか救命できない患者がいるのは事実であり、移植後虚血再灌流障害の抑制は小腸移植の発展に必要不可欠と考えられる。本研究の目的は、抗炎症作用、抗アポトーシス作用をもつシグナルガス分子としてCO-releasing molecule; CORMを溶解した保存液を小腸グラフトの管腔内に投与することで、移植後虚血再灌流障害を制御できるかどうかを調べることである。R2年度内までに、雄性LEWラットを用いて、同種同系・同所性小腸移植モデルを既報の方法を用いて作成した。各小腸グラフトにおいて、CORMは25μM、50μM、100μMの濃度で検討した。対照群としてCORMを空気中に48時間放置しCOを脱気させたものをiCORMとして使用した。これらを実験群として犠牲死させた後、小腸グラフトサンプルを採取・凍結保存・ホルマリン固定を行い、組織学的検討を実施した。また、炎症性サイトカインのmRNAをRT-PCRで測定した。組織学的検査でiCORM群では粘膜の脱落が著明であり、腸管透過性が亢進していたが、CORMを充填した腸管はバリア機能が有意に保たれていた。同様にIL-6など炎症性サイトカインmRNAも再灌流後に上昇するが、CORM群では有意に抑制されていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
雄性LEWラットを用いて、同種同系・同所性小腸移植モデルを既報の方法を用いて作成した。各小腸グラフトにおいて、CORMは25μM, 50μM, 100μMの濃度で検討した。対照群としてCORMを空気中に48時間放置しCOを脱気したものをiCORMとして使用した。これらを実験群として犠牲死させた後、小腸グラフトサンプルを採取・凍結保存・ホルマリン固定を行い、組織学的検討を実施した。また、炎症性サイトカインのmRNAをRT-PCRで測定した。
|
Strategy for Future Research Activity |
雄性LEWラットを用いて、同種同系・同所性小腸移植モデルをCORM群、iCORM群それぞれについて作成し、それに加えて、ODQを加えた小腸移植モデルラットを作成し、グラフトを採取する。COはGTPをcGMPに変換する酵素であるSoluble guanylyl cyclase (sGC)を活性化することで効果を発揮することが知られており、sGCの阻害剤であるODQを用いて、cGMP産生量を抑制することで、CORMの効果が残存するかどうか、同じモデルを用いて検討する。ODQによりCORMの効果が失われれば、COはsGCを介して機能していることが推測される。実験群は(1) 正常腸管 (2) IR (ischemia reperfusion)/iCORM (3) IR (ischemia reperfusion)/CORMの基本に、ODQを加えた合計6群を設定する予定である。さらにCORMが腸管のバリア機能およびTight Junctionに及ぼす影響を調べるため、栄養吸収やイオン環境保持などの機能を保つバリア機能の中心となるtight junction proteinと呼ばれる分子についてWestern blotで検討する。Zonula occludens-1 (ZO-1), Claudinなどが代表的であり、虚血再灌流後は発現が減少するが、CORMによりこれらの喪失を防ぐことが予想される。
|
Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルスの影響により、動物実験使用許可等が遅れたため。 (使用計画)次年度、実験に必要なマウス及びサンプル等の費用に充当する。
|