2020 Fiscal Year Research-status Report
scRNA-seqを用いた化学療法による癌免疫環境改変メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K22957
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安藤 陽平 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40746864)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | scRNAseq / 胃癌 / 化学療法 / 免疫微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、癌に対する免疫療法の有効性が報告され、腫瘍内の免疫環境が有効な治療標的であることが証明されているが、その複雑性・多様性から詳細は未だ不明である。本研究は、胃癌化学療法後の免疫微小環境の変化をscRNA-seqを基本とした経時的・空間的な発現データマップを作成し、化学療法に伴う治療効果・抵抗性出現メカニズムを解明することを目的として開始された。 本年度は、既に当研究室に導入されているdroplet型のChromium controller(10X genomics社)を用いて胃癌の手術切除標本を対象にscRNA-seqを施行し、NGS解析を行った。NGS解析後のデータはSauratパッケージを用いて解析を行い単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現から各細胞の特徴を評価した。 まず正常胃粘膜と化学療法未施行胃癌を比較し、胃癌微小環境を構成する免疫細胞の分類やそれらの機能的評価を行った。胃癌患者4症例に対し、正常粘膜部4検体・癌部4検体の計8検体を用いてscRNA-seqを行い解析すると、従来の報告通りTリンパ球・Bリンパ球・NK細胞などの免疫細胞が同定された。さらにそれらの機能評価を行うために、正常部と腫瘍部で比較すると、Bリンパ球について、正常部と比較し腫瘍部で活性化Bリンパ球の分化が促進していることが示唆されBリンパ球が癌化になんらかの関連があることが示唆された。またNK細胞について、腫瘍部で殺細胞機能が低下しており、腫瘍促進に寄与している可能性が考えられた。これらの新たな知見は令和3年度の学会総会での発表を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胃癌の切除標本を基にscRNA-seqを行いNGS解析、単一細胞レベルの遺伝子発現を評価することができた。 化学療法未施行胃癌と正常粘膜部の比較では免疫細胞の特異的発現遺伝子に着目しクラスター分類を行うとTリンパ球・Bリンパ球などの既存のセルタイプに分けることができ、各細胞種での詳細な機能評価を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
化学療法施行胃癌の症例を蓄積し、化学療法施行の有無に注目しながら今回同定されたセルタイプ毎の機能変化などの解析を進めていく。さらに発現変動遺伝子に着目し、化学療法に伴う免疫環境の変動に関与する因子を同定することを目標とする。 関連因子が同定された場合には、ヒト胃癌検体よりPDX(patient derived xenograftモデル)を作成し、化学療法(5-FU系など)を行い治療前後での関連因子の変動を評価する。
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Research Products
(1 results)