2020 Fiscal Year Research-status Report
Effect of neutrophil extracellular traps on tumor infiltrating lymphocytes in gastrointestinal tumor
Project/Area Number |
20K22960
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
金丸 理人 自治医科大学, 医学部, 助教 (10625544)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 好中球細胞外トラップ / 腫瘍浸潤リンパ球 / 消化器癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球細胞外トラップ(Neutrophil extracellular traps;NETs)は、免疫細胞をトラップしその機能を修飾することが推測されているが、その詳細は不明である。また、固形癌の組織中に存在する事実が報告されているが、その病態に与える影響に関する情報は少ない。がん微小環境に存在するNETsが、近傍のT細胞やマクロファージを介してがんの進行に如何なる影響を与えているか?を明らかにする目的で以下の知見を得た。 (1)健常人由来の好中球を分離、PMA1microMの濃度で15分刺激、洗浄後、さらに4時間培養してNETsを誘導する。CD3抗体とIL-2で活性化したTリンパ球をダブルチャンバーの上層に、下層にCXCL-11を加え、2時間後に下層へ遊走したリンパ球を測定する実験系にNETsを添加すると、T細胞の下層への遊走はほぼ完全に抑制された。また、Western blotting法にてPMA刺激好中球の上清中にはCXCL-11を効果的に分解する因子が含まれていることが判明した。また、dish 上に培養した活性化T細胞の二次元での運動をタイムラプス動画で追跡する実験系で、PMA刺激好中球の上清を添加するとrandom migrationが強く抑制される現象が観察された。しかし、この抑制現象は、DNAse1によるNETの分解でも同様に起こり、超遠心でNET成分を除去した上清を添加しても観察されることから、NET以外の活性化好中球由来の因子が関与していると考えられた。 (2)手術にて切除した胃癌、大腸癌の組織切片を、CD66b抗体、シトルリン化ヒストン(Cit-H3)抗体を用いて免疫染色すると、好中球とNETを起こしている好中球を検出することができた。大腸癌においては、Cit-H3陽性好中球の頻度が多いほど、浸潤したCD8(+)T細胞の割合が少ない傾向が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NET成分を含んだPMA刺激好中球が、抗原刺激を模した抗CD3抗体で刺激した活性化Tリンパ球の遊走、運動を強く抑制する現象が確認できた。しかし、この抑制現象は予想とは異なり、NET以外の成分が関与している可能性が高いことが判明した。この機序について、今後の検討とする。ヒト癌の切除標本にて、CD66b(+)腫瘍浸潤好中球およびその中でシトルリン化ヒストンH3陽性のNETを起こしている好中球を免疫染色で別々に検出することに成功し、大腸癌においては、CD8(+)T細胞の浸潤度と相関する傾向が認められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)好中球を PMA で刺激して得られた上清を超遠心でNETを除去した成分が活性化T細胞のケモタキシスを抑制する実験系で、加熱処理、neutrophil elastase (NE), pan-serineprotease inhibitor(PMSF), ATP, adenosine, ROS阻害薬などの物質を添加し、抑制現象の変化を検討する。また、rho, racなどの運動関連分子の変化をwestern blotにて検討し、その原因物質を同定する。 (2)健常人末梢血好中球をPMAで刺激して得られたNETと同じドナー由来のCD14(+)単球を3~7日間混合培養し、樹状細胞・M1, M2マクロファージへの分化を特異的表面抗原に対するモノクロナル抗体で染色し、flowcytometryで検討する。M1マーカーには、HLA-DR, CD80, CD83, CD86、M2マーカーにはCD163, CD206を用い、CCR2、CCR7などのケモカイン受容体、免疫チェックポイント分子PD-L1、L2も検討に含める。また、培養上清をストックし、マルチプレックス定量抗体アレイを用いて、それぞれの細胞のサイトカイン産生能を明らかにする。さらに、ケモカイン、CCL-2に対するケモタキシス能をダブルチャンバー法にて検討する。 (3)多数の胃癌・大腸癌切除標本におけるNETsの評価を行うとともに、それぞれの臨床病理学的因子、予後との相関性を検討する。また、CD4,CD8, CD68, CD163に対する抗体でも染色し、NETsとT細胞やM2マクロファージの浸潤様式との関連性を明らかにする。 (4) YTN16をPMA刺激でNETsを起こさせた好中球と混合し皮下に接種し、翌日よりDNAse (2000u/mouse)を隔日ごとに腹腔内投与し、腫瘍の成長速度を検討する。
|
Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用している。 未使用額については、2021年度物品費として使用予定である。
|
-
[Journal Article] Pathological complete response after intraperitoneal paclitaxel and systemic combined chemotherapy in a patient with peritoneal metastases from gastric cancer: a case report2020
Author(s)
Y. Meguro, H. Yamaguchi, J. Kitayama, R. Kanamaru, S. Matsumoto, T. Ui, H. Haruta, K. Kurashina, S. Saito, Y. Hosoya, A. K. Lefor,N. Sata.
-
Journal Title
Surg Case Rep
Volume: 6(1)
Pages: 63
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Presentation] Flowcytometryを用いた胃癌腹膜播種患者の腹腔内遊離細胞の解析2020
Author(s)
金丸 理人, 大澤 英之, 高橋 和也, 松本 志郎, 春田 英律, 倉科 憲太郎, 齋藤 心, 山口 博紀, 佐久間 康成, 川平 洋, 堀江 久永, 細谷 好則, 味村 俊樹, 北山 丈二, 佐田 尚宏
Organizer
第120回日本外科学会定期学術集会
-
[Presentation] Flowcytometryによる胃癌腹膜播種患者の腹腔内遊離細胞の解析(Analysis of intraperitoneal free cells of gastric cancer peritoneal meatastasis by ow cytometry)2020
Author(s)
金丸 理人, 大澤 英之, 髙橋 和也, 松本 志郞, 春田 英律, 倉科 憲太郎, 齋藤 心, 山口 博紀, 細谷 好則, 佐田 尚宏, 北山 丈二
Organizer
第92回日本胃癌学会総会
-
-