2021 Fiscal Year Research-status Report
肝再生調節機構におけるTEM8の役割解明と新規治療法開発への応用
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20K22964
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
野口 隼矢 日本医科大学, 医学部, 助教 (30879698)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | TEM8 / 細胆管 / NASH / 慢性肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肝再生調節機構におけるTumor endothelial marker 8(TEM8)の役割とシグナル経路を解明することにより、慢性肝疾患に対する新規治療開発のための研究基盤構築を目指すことを目的とした。 2021年度の研究成果として、C57BL/6Jマウスに対するコリン欠乏食を用いた慢性肝障害モデルマウス(NAFLD/NASHモデルマウス)の作製を実施した。特殊飼料の給餌はDay28まで継続し、Day7, 14, 21, 28における組織解析および血液生化学検査により肝障害の評価を行った。特殊飼料を給餌したマウスは、Day7において既に高度な脂肪肝を呈し、AST, ALTの上昇(AST/ALT: <1)を示していた。また、給餌期間が長くなるにつれて、炎症細胞の出現・線維化といった組織学的変化が認められた。組織学的評価にはHE染色およびOil-red染色、MT染色を用いて行った。このことから、本研究で用いた特殊飼料により、NAFLD/NASHモデルマウスを作製することができたと考えられた。次に、これらモデルマウスを用いたTEM8の発現解析を実施した。これまで、正常組織におけるTEM8は細胆管マーカーの1つであるZO-1の内側で発現していたことから細胆管に局在していることがわかっている。しかし、脂肪肝による肝細胞の形態的変化に伴い、TEM8の細胆管での発現は減少することがわかった。また、それとは別に一部の肝細胞においては細胞質内にTEM8が発現していた。現在、これら組織において、TEM8のリガンドであるuPAおよびCol6免疫組織化学的解析を実施し、さらにTEM8 mRNA・タンパク質の発現を解析することで慢性肝障害に伴うTEM8の発現・局在の変化に関する検索を行っている。また、TEM8のクローニングに着手しており、in vitroでの機能解析を実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究成果はやや遅れており、その要因としては新型コロナ感染症に伴う非常事態宣言による全般的な研究開始の遅れが影響している。昨年度実施予定であった慢性肝炎モデルマウスの作製およびTEM8発現解析が本年度に実施せざるを得なかったが、順調にモデルマウスの作製およびサンプリング回収を行うことができた。しかしながら、その分本年度実施予定であったTEM8機能解析の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの正常および慢性肝炎モデルマウスにおける免疫組織化学的解析の成果に基づき、NASH病態の進行に伴うTEM8発現および局在変化について、さらなる定量的解析を計画している。またNASH病態変化に伴うTEM8の挙動に対して、そのリガンド因子の発現解析を実施することで細胆管障害におけるTEM8-uPA and/or Col6シグナリングの影響を検索する。一方で、TEM8発現ベクターを作製することでin vitro実験系でのTEM8機能解析へと発展させ、細胆管構造の形成機構におけるTEM8の役割を解明することをめざしていく。
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Causes of Carryover |
2021年度は慢性肝炎モデルマウスの作製および発現解析を実施したことで、去年度から繰り越していた助成金および2021年度使用予定分の約80%を使用した。また昨年度から継続しているコロナ渦の影響に伴う学会のweb開催への変更により、その分の旅費を2021年度の物品費およびその他費用(外注解析:血液生化学検査)として使用することとした。2021年度に実施できなかったin vitro解析および研究成果の報告のために、その分の助成金を次年度へと繰り越し使用する予定である。
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