2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪由来幹細胞シートを付加した強化型自家神経移植による末梢神経再生の研究
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20K22974
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
村井 惇朗 金沢大学, 附属病院, 医員 (40882501)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 自家神経移植 / 末梢神経再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度の外傷や腫瘍の切除に伴う末梢神経欠損は、運動障害や知覚障害をきたし生活の質を著しく低下させてしまう。末梢神経欠損に対する治療としては現在のところ自家神経移植が治療のgold standardと考えられているが、臨床上自家神経移植を行っても十分な機能回復が得られる例は50%に満たないと報告されている。 今回我々は脂肪由来幹細胞(Adipose-derived stem cells: ADSCs)をシート化した脂肪由来幹細胞シート(ADSCシート)を用いて自家神経移植の治療成績を向上させることを目的とし研究を行うこととした。 ラットの坐骨神経を15mm切除し翻転させて自家神経移植を行った。自家神経移植片に何も付加しないAuto群と、自家神経移植片にADSCシートを被覆したSheet群を作製し、移植後12週に機能評価を行った。結果、移植後12週においてADSCシートを付加することで神経再生を促進することが判明した。 また、Sheet群の成績が改善した原因を検討するため、ADSCシートを付加した自家神経移植片の遺伝子発現の評価を行った。モデル作製後1,4,7,14日においてAuto群、Sheet群の移植神経の中央部分を11mm採取し、リアルタイムRT-PCRを行った。神経再生に関与するマクロファージ(MΦ)の遺伝子発現を評価するためiNOS、Arginase1の遺伝子発現を評価したところ、移植後4日、7日においてSheet群でのiNOS、Arginase1の発現が有意に増加していた。MΦは損傷した神経の再生に関与していると報告されており、M1MΦはワーラー変性における変性ミエリンの除去に関与し、M2MΦは軸索の伸長に関与していると報告されている。ADSCシートは自家神経移植後早期においてMΦに作用し、変性ミエリンの除去や軸索の伸長を介して神経再生に寄与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの鼠径部の脂肪からADSCを作製し、その後、第3~第4継代目のADSCがConfluentになった状態でアスコルビン酸を添加し、ADSCシートを作製した。シートが完成したタイミングでモデル作製を行った。モデルは12~14週齢のWistarラットを用い、左坐骨神経を15mmで切除して、切除した神経を翻転させて自家神経移植を行った。 自家神経移植単独のAuto群、自家神経移植片をシートで被覆したSheet群を作製し、モデル作製後12週において、下肢の機能評価としてSciatic functional index (SFI)、前脛骨筋の筋湿重量、また複合筋活動電位における終末潜時と振幅を評価し、前脛骨筋の筋湿重量と複合筋活動電位の終末潜時に関してはSheet群が有意に改善を認めた。 また、Sheet群の成績が改善した原因を検討するため、ADSCシートを付加した自家神経移植片の遺伝子発現の評価を行った。方法は、モデル作製後1,4,7,14日においてAuto群、Sheet群の移植神経の中央部分を11mm採取し、リアルタイムRTPCRでマクロファージのマーカーであるiNOS、Arginase1の遺伝子発現の評価を行った。結果、iNOSとArginase1に関して移植後4日、7日においてSheet群での発現が有意に増加していた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、移植神経の組織学的評価や、移植神経内の遺伝子変化を引き続き評価していく。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に応じて物品等を購入している。動物の購入、実験器具の購入、各種薬品の購入を行う。
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