2020 Fiscal Year Research-status Report
子宮内膜症とそのホルモン治療が動脈硬化関連バイオマーカーに及ぼす影響について
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20K22983
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
前田 英子 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (30883011)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / ホルモン治療薬 / 心血管リスク / 酸化ストレス / 慢性炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜症が将来の心血管疾患のリスクを増加させることが大規模コホート研究により示されている。子宮内膜症に対するホルモン治療は、病巣局所の炎症を制御し症状を軽減するが、心血管リスクへの影響については明らかではない。研究代表者は、高感度CRPや酸化ストレスが共に独立した心血管疾患関連因子であるという概念に基づき、ヒトにおいて子宮内膜症に対するホルモン治療が高感度CRPと酸化ストレスを増加させることを明らかにした(業績#1,EJOGR 2020)。本研究では合成ホルモン剤が動脈硬化やその基盤となるインスリン抵抗性に与える分子メカニズムを明らかにするとともに、子宮内膜症およびそのホルモン治療が動脈硬化関連マーカーに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 ヒトにおいては、ジエノゲストあるいは低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)によるホルモン治療の適応となる子宮内膜症患者を対象とし、非疾患者をコントロールとした。1)血清脂質プロファイル、2)炎症マーカーとして高感度 CRP、3)酸化ストレスマーカーとして、酸化 LDL および diacron-reactive oxygen metabolites(d-ROMs)テスト、4) 動脈硬化の指標として心臓足首血管指数および足関節上腕血圧比の測定を行った。結果、子宮内膜症に対するLEPの使用で高感度 CRPとd-ROMs 値が増加した。さらに、LEPの投与期間が長くなると動脈硬化性指標が上昇した。今後、インスリン抵抗性と合成ホルモン剤の関連を評価するため、脂肪細胞や子宮内膜間質細胞における各種ホルモン添加後のアディポサイトカイン発現変化を real-time PCR や western blot にて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたヒトから検体を採取することは問題なく完遂した。子宮内膜症に対するLEPの使用で高感度 CRPとd-ROMs 値が増加し、さらに、LEPの投与期間が長くなると動脈硬化性指標が上昇することが確認された。今後はインスリン抵抗性に関する基礎研究を行いさらに詳細に検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脂肪細胞および子宮内膜間質細胞を用いて、各種ホルモンを添加した後にアディポサイ トカイン(アディポネクチン、レプチン、TNF-α、IL-6、MCP-1)、動脈硬化作用を持つ 1 型アンジオテンシンII受容体の発現変化を real-time PCR や western blot にて検討する。 2)各種ステロイドホルモン受容体拮抗薬による上記項目の抑制実験を行う。 3)卵巣を摘出した C57BL/6 マウスにおいて、各種ステロイドホルモンの投与によるインス リン抵抗性およびその関連因子を評価する。インスリン抵抗性の指標として、空腹時血糖 値およびインスリン濃度を測定し HOMA-IR を算出する。また、脂質代謝の指標として、 総コレステロール、トリグリセライド、遊離脂肪酸を ELISA にて測定する。慢性炎症を誘 導する免疫細胞であるマクロファージの活性化を real-time PCR やフローサイトメトリーを 用いて評価する。さらに、マクロファージが活性化されるための受容体である Toll 様受容 体 2・4・9 の発現を real-time PCR にて評価する。
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Causes of Carryover |
ヒト検体での実験を先行して行い、基礎研究およびマウス検体用の試薬の購入を行わなかったため。これれを今年度行うために、今年度は使用額が増加する見込みである。
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