2020 Fiscal Year Research-status Report
悪性神経膠腫に対するPTX3、IL13Rα2を標的とした近赤外光線免疫療法
Project/Area Number |
20K22988
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
木村 誠吾 大阪医科大学, 医学部, 非常勤医師 (10874886)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 近赤外光線免疫療法 / EGFR / IL13Ra2 / 悪性神経膠腫 / 膠芽腫 / モノクローナル抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
近赤外光線免疫療法(Near-Infrared Photoimmunotherapy:NIR-PIT)は、がん抗原を標的とする抗体に光感受性物質であるフタロシアニン色素(IR700)を結合させた光感受性抗体薬を用いることで、細胞毒性と免疫療法の特異性を組み合わせた新しいがん治療である。NIR-PITはモノクローナル抗体を用いて細胞表面の受容体を標的とする治療法であるが、腫瘍は受容体発現の多様性および不均一性を特徴としており、1つの抗原を標的とした光感受性抗体薬では治療有効性は低い。本研究では、神経膠腫の細胞膜に特異的に高発現するEGFRおよびIL13Ra2の抗体をIR700と結合させ、それらをカクテルした光感受性抗体薬を用いてNIR-PITの治療効果を評価した。 その結果、EGFR、IL13Ra2を高発現しているヒト膠芽腫細胞では、多くのIR700が細胞膜に局在しており、PIT実施後の細胞破壊の形態変化を観察できた。In vitroでの抗EGFR抗体-IR700と抗IL13Ra2抗体-IR700を併用したNIR-PITは、コントロール群や抗EGFR抗体-IR700、抗IL13Ra2抗体-IR700単独群と比較してin vitroで有効な殺腫瘍効果を証明した。そして、多様性をもつ膠芽腫であるが、PITにおける標的細胞膜抗原の発現量と殺細胞効果で有意な正の強い相関関係がみられた。さらに、PIT処理後の腫瘍は併用群で劇的に増殖能が抑制された。 NIR-PITは腫瘍免疫賦活作用が働くため、腫瘍栄養血管にBBBの欠損や破綻が見られる高度悪性脳腫瘍ではNIR-PITの腫瘍抑制効果が得られる可能性がある。また、腫瘍細胞を多く破壊することによる高容量の抗原発現は、ヘルパーT細胞の増殖を促進し、EGFR/IL13Ra2併用のNIR-PITはより免疫応答を活性化させ、さらなる治療効果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IL13Ra2の抗体を用いたNIR-PITに関しては、光感受性物質であるIR700との結合手技が確立され、in vitroでのヒト悪性神経膠腫に対する殺腫瘍効果が証明された。しかし、PTX3の抗体に関しては、IR700との結合が不安定であり、当施設で所有しているヒト悪性神経膠腫の腫瘍株での発現量が低いため、NIR-PITの治療効果を認めなかった。そのため、EGFRおよびIL13Ra2の抗体をIR700と結合させ、それらを併用した光感受性抗体薬を用いてNIR-PITの治療効果を評価することとした。現在、in vitroでの研究はほとんど完了しており、抗EGFR抗体-IR700と抗IL13Ra2抗体-IR700を併用したNIR-PITは、コントロール群や抗EGFR抗体-IR700、抗IL13Ra2抗体-IR700単独群と比較してin vitroで有効な殺腫瘍効果を証明した。今後は、in vivoでのNIR-PITの治療効果を評価する方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
PITの治療メカニズムとしては、抗腫瘍免疫を担うT細胞のプライミングが促進されることが要諦である。そのため、In vivoのNIR-PITで、近赤外線光を励起されていない遠隔腫瘍の治療効果、つまり腫瘍免疫賦活作用による間接的治療効果を証明するためには、免疫機能が低下している脳腫瘍マウスモデルを使用した実験では困難と考える。そこで、ラットのEGFRやIL13Ra2抗体を用いて、脳腫瘍ラットモデルに対して間接的治療効果を証明する方針へと変更する。それでも治療効果を認めない場合は、チェックポイント阻害薬や制御性T細胞(CD25陽性細胞)に対するNIR-PITの併用が必要となる。今後は、ラット悪性神経膠腫細胞株であるF98やC6を用いて、in vivoでEGFRやIL13Ra2を標的としたNIR-PITの治療効果を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)令和2年度予定予算の一部分は、国際学会が延期されたため、旅費を使用していない。 (使用計画)令和3年度に延期された国際学会に参加・発表予定であり、これに使用する予定である。
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