2020 Fiscal Year Research-status Report
卵巣がん同所移植PDXモデルを用いた腹膜播種進展機構の解明と新規標的治療の開発
Project/Area Number |
20K23003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 真由子 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (70880988)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 卵巣がん / 腹膜播種 / 大量腹水 / PDXマウスモデル / 卵巣同所移植 / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣がんの進行は腹膜播種という特徴的な形式をとることが多い。腹膜播種をきたした卵巣癌は、最大限の腫瘍減量手術と化学療法を用いた現行の集学的治療を用いても完全に制御することは難しく予後不良である。腹膜播種の機序解明を目指し、我々はヒト卵巣がんの腹膜播種進展を忠実に再現する患者由来腫瘍異種移植(Patient-derived xenograft; PDX)卵巣同所移植マウスモデルを用いた当研究を実施している。このPDXマウスでは、マウス卵巣に同所移植されたヒト卵巣がん腫瘍組織が腫瘍の増大とともに腹腔内播種病変ならびに大量腹水を生じ、これはヒトの卵巣がんの病態・進展を忠実に模倣している。このことを利用して、原発卵巣腫瘍・腹腔内播種腫瘍・大量腹水中の腫瘍細胞におけるそれぞれの遺伝子発現変化を網羅的に比較解析し、腹膜播種制御ならびに抗がん剤耐性に関わる重要な分子標的を同定する計画である。 当研究を開始してから現時点までで、7例の卵巣癌PDXマウスモデルを確立している。ヒト卵巣腫瘍を移植してから約2-6か月でマウスPDX腫瘍は直径10㎜以上へと増大し、その腫瘍を採取して細切したのち、新たなマウスへ移植してPDXマウスモデルを増やしていっている。卵巣がんの組織系は、高悪性度漿液性癌、明細胞癌をはじめとして低悪性度漿液性癌、粘液性腺癌、中腎様癌を認めている。 現在腹水、腹膜播種を生じるPDXモデルマウスを数例認めており、このモデルを用いて原発卵巣腫瘍、腹腔内の播種腫瘍、大量腹水中のがん細胞を採取し、抽出したゲノムDNA ならびにTotal RNAを用いてDNA/RNA Panel Sequencing での遺伝子異常解析ならびにcDNA microarray での網羅的遺伝子発現を解析・比較する計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ヒト卵巣癌PDX同所移植モデルマウスを用いて、ヒト卵巣がんの腹膜播種進展における遺伝子発現の変化を網羅的に調べ、播種進展ならびに抗癌剤抵抗性を制御する分子標的治療を探索することである。現在はまず「研究1. 卵巣がん腹膜播種PDX モデルマウス数種類を確立し、そのゲノム発現異常の解析」を行っているところである。PDX腫瘍の増大、モデルマウスの確立は6か月から1年の時間が費やされると予想していたが、当初の予定以上にヌードマウスへ移植したヒト卵巣癌の生着率は高く(約70%)、現時点までで、7例の卵巣癌PDXマウスモデルを確立している。今後もさらに多くの卵巣癌PDXマウスを作成し、その中で腹膜播種をきたすモデルを当研究に利用していく。現時点において、大量腹水、腹膜播種を生じるPDXモデルマウスを数例認めており、これらから原発卵巣腫瘍、腹腔内の播種腫瘍、大量腹水中のがん細胞を採取し、その解析用にゲノムDNA ならびにTotal RNAを抽出しているところである。サンプルが準備出来次第、DNA/RNA Panel Sequencing での遺伝子異常解析ならびにcDNA microarray での網羅的遺伝子発現を解析・比較し研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もさらに多くの卵巣癌PDXモデルマウスを作成し、その中で腹膜播種をきたすモデルを当研究に利用していく予定である。大量腹水、腹膜播種を生じるPDXモデルマウスを多く確立し、これらから原発卵巣腫瘍、腹腔内の播種腫瘍、大量腹水中のがん細胞を採取し、その解析用にゲノムDNA ならびにTotal RNAを抽出していく。サンプルが揃い次第、DNA/RNA Panel Sequencing での遺伝子異常解析ならびにcDNA microarray での網羅的遺伝子発現を解析・比較し、腹膜播種において高発現/低発現となるPathway・分子を探索する。そして候補となる分子標的のタンパク発現を卵巣癌腹膜播種PDXモデルマウスのサンプルを用いて免疫組織学的検討にて確認する。 そして上記解析から得られた情報をもとに、「研究2. ヒト腫瘍腹膜播種過程における遺伝子発現の変化の検討」をヒト卵巣癌サンプルを用いて行い、これによってヒト卵巣がん腹膜播種転移を忠実に再現するPDX マウスモデルで同定したものが、ヒトにおいても再現できるか確認する。さらには「研究3. 卵巣がん細胞株ならびに腹膜播種PDX モデルを用いて新規分子標的治療の検討」を上記で同定した腹膜播種・抗癌剤抵抗性に関する分子標的に対して、候補薬を化合物ライブラリーを利用して探索し、腹膜播種モデルマウスで薬効を調べる予定としている。
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