2021 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣がん同所移植PDXモデルを用いた腹膜播種進展機構の解明と新規標的治療の開発
Project/Area Number |
20K23003
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 真由子 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (70880988)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 卵巣がん / 腹膜播種 / 大量腹水 / PDXマウスモデル / 卵巣同所移植 / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣がんは腹膜播種という特徴的な進展形式をとることが多いが、最大限の腫瘍減量手術と化学療法による現行の治療を実施しても腹膜播種を完全に制御することは難しく予後不良である。本研究では腹膜播種の機序解明を目指し、ヒト卵巣がんの腹膜播種進展を忠実に再現する患者由来腫瘍異種移植(Patient-derived xenograft; PDX)卵巣同所移植マウスモデルを用いて行った。このPDXマウスは、マウス卵巣に同所移植されたヒト卵巣がん腫瘍組織が腫瘍の増大とともに腹腔内播種病変と大量腹水を生じ、ヒトの病態・進展を忠実に模倣する。 我々は腹膜播種進展とともに大量腹水産生をきたすPDXモデルWO-77を確立した。WO-77のがん組織から抽出したゲノムDNAとTotal RNAを用いてPanel Sequencingを行ったところ、CCNE1遺伝子増幅を有することを同定した。CCNE1遺伝子増幅は高異型度漿液性卵巣癌の約20%に認め、プラチナ系抗がん剤耐性と関連し予後不良因子として知られている。一方で、CCNE1遺伝子増幅は細胞分裂時のReplication stressを増加させ、細胞周期のG2-Mチェックポイントへの依存性を高める。このことに着目し、細胞周期やDNA Damageに関する分子標的薬WEE1阻害剤とATR阻害剤の併用療法(WEE1i+ATRi)が奏功すると考えた。 PDXモデルWO-77にWEE1i+ATRiを投与すると、それぞれの単剤療法ならびにカルボプラチン単剤より優位な抗腫瘍効果、腹水産生抑制と生存率の延長を認めた。一方で、CCNE1遺伝子増幅を持たないPDXモデルWO-24ではWEE1i+ATRiによる抗腫瘍効果は乏しく、腹水産生は抑制されなかった。 腹膜播種PDXマウスモデルを用いて今後もさらなる腹膜播種進展機構の解明と新規標的治療の開発研究を行ってゆく。
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