薬剤性歯肉増殖症における細胞接着分子を介した上皮-結合組織相互作用の解明

2021 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 20K23026
• Research Institution: Osaka University
• Principal Investigator: 上田 亜美 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90876963)
• Project Period (FY): 2020-09-11 – 2022-03-31
• Keywords: 薬剤性歯肉増殖症 / 歯肉上皮 / 細胞接着

Outline of Annual Research Achievements

本研究では、薬剤が細菌バイオフィルム防御において重要な歯肉上皮に及ぼす影響を解析し、薬剤による歯肉上皮細胞の細胞接着分子に与える影響を検討することで、「歯肉増殖」発症の機構解明を目的に研究を遂行した。フェニトイン、ニフェジピン、シクロスポリンをそれぞれヒト歯肉上皮細胞に作用させ、real-time PCR法を用いて様々な細胞接着関連分子の発現を比較検討した。フェニトイン及びニフェジピンに関しては溶媒条件の検討を行なったが、高濃度で作用させることが難しく、濃度の変化による比較は実施できなかった。シクロスポリンにおいては、濃度依存的に差が見られた分子が存在した。
また、歯肉増殖症モデルラットの作製を試みた。生後20日目より普通粉末飼料中にシクロスポリン粉末を混和し、自由摂取させることで歯肉肥大が誘発されてくるかどうか、１週毎に口腔内の写真を撮影して観察を行い、さらにシクロスポリン投与開始して８週目にラットの上顎骨を採取し、実体顕微鏡下で歯肉の観察を行った。摂取させるシクロスポリンの濃度を上げる、シクロスポリン投与に加え歯牙結紮により歯根膜に炎症を与えるといった検討も行なったが、コントロールと比較してシクロスポリン投与ラットに肉眼的な変化はみられなかった。
さらに、シクロスポリン投与によって歯肉上皮において変化する因子を網羅的に検討するために、ヒト歯肉上皮細胞及びラット歯肉上皮を用いてRNAマイクロアレイによる検討を行なった。GO解析により、細胞膜の主成分であるリン脂質に関連する遺伝子発現が、コントロールと比較してシクロスポリン投与において優位に上昇していることが明らかとなった。