2020 Fiscal Year Research-status Report
メカノセンサーチャネルが調節する口腔粘膜創傷治癒機構の解明
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20K23033
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉本 怜子 佐賀大学, 医学部, 助教 (70878181)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / メカノセンサー / イオンチャネル / アクチン / ミオシン / 細胞移動 / 上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
傷は速やかに治癒することが望まれる。口腔粘膜は傷を受けやすく多様な刺激に曝される一方で、治癒は皮膚よりも速やかで瘢痕が少ない。ゆえに、口腔粘膜の速やかな創傷治癒機構の解明は、新しい治癒促進法や再生療法へ繋がると考えられているが、その機構は未だ不明な点が多い。私たちは、口腔粘膜には常に伸展や圧縮などの機械的刺激が加わることに着目し、口腔粘膜に発現する機械刺激感受性のメカノセンサー陽イオン透過性チャネルの活性化が、創傷治癒に関わるとの仮説を立て、メカノセンサーイオンチャネルが創傷治癒に与える影響を明らかにすることを目指した。本年は、特に傷の被覆に関わる上皮細胞のうち、移動の先端に位置する細胞と追随する細胞群におけるメカノセンサーの挙動を、微細構造学的に明らかにすることを目指した。歯肉上皮培養細胞株を用いた生細胞イメージングにより細胞移動に伴う形態変化を捉え、この標本を transient receptor potential vanilloid 4 (TRPV4), Piezo1, Piezo2 に対する特異的抗体を用いて免疫染色することにより、メカノセンサー分子群の局在を可視化した。集団移動する細胞群の先端の細胞において、仮足の形態によって TRPV4, Piezo1, Piezo2 の発現パターンに違いがあることがわかった。さらに超解像イメージングにより、細胞内に発達する線維状アクチン、ミオシンに対して特徴的な位置にメカノセンサーの局在が見られることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年はCOVID-19の影響により遺伝子改変マウスを用いた実験が思うように進められなかった。そこでin vivo創傷モデルの作成は当初の計画より先送りし、培養細胞を用いた実験から研究に着手した。培養細胞の生細胞イメージングおよび免疫染色は実験系の立ち上げができ、成果も得られていることから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス口蓋粘膜創傷モデルを作製し、再上皮化過程における時期・部位特異的な TRPV4, Piezo1, Piezo2 発現を解明する。in vitro 実験により確認されたメカノセンサー分子の局在が、in vivo 創傷モデルにおいて認められるかという観点から確認していく予定である。また、培養細胞においても、イオンチャネルの活性およびカルシウムが細胞移動に与える影響を検討し、メカノセンサーイオンチャネルが治癒再上皮化に関与する機構を更に明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴う研究活動の制限や学会がオンライン開催に変更になったことにより、実験計画や出張の予定変更を余儀なくされ、次年度使用額が生じている。次年度使用額は、翌年度の請求分と併せて、当初の実験計画に沿った試料採取や試薬の購入、一部実験についての業務委託の費用に充てることを計画している。
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