2020 Fiscal Year Research-status Report
肺炎球菌の菌体表層タンパク質BgaAが病態発症に果たす役割の解析
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20K23053
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹村 萌 大阪大学, 歯学研究科, 特任研究員 (20876635)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌は呼吸器感染症の主要な起因菌であり、ヒトの口腔および鼻咽腔粘膜に常在している。免疫の未発達や低下などの要因により、菌血症を伴わない肺炎、中耳炎、副鼻腔炎を含む非侵襲性感染症を発症させる。さらに、本菌が血中への侵入により血行性に伝播し,遠隔臓器で定着・増殖することにより、菌血症を伴う肺炎、髄膜炎、敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症を惹き起こす。本研究では、病原性に果たす機能に不明な部分が多いBgaAが肺炎球菌感染症の重篤化に関与するかについて解明するとともに、ワクチン抗原としての可能性を明らかにすることを目的とした。 研究初年度は、まずヒト血液由来の臨床分離株である肺炎球菌のTIGR4株を用いて、bgaA欠失株を作製した。TIGR4野生株およびbgaA遺伝子欠失株をヒト血液、血清、あるいは好中球と混和し、経時的に生存菌数を算定することにより、生存菌数や好中球に対する各菌株の抗貪食能を比較した。その結果、bgaA遺伝子欠失株は野生株と比較して有意に生存率が低下した。次にTIGR4野生株およびbgaA遺伝子欠失株をヒト肺胞上皮培養細胞とヒト脳微小血管内皮細胞に感染させ、経時的に破砕液を調製し、段階希釈液を寒天培地に播種することで細菌の細胞への付着率を算出した。ヒト肺胞上皮細胞とヒト脳微小血管内皮細胞ともに、bgaA遺伝子欠失株が野生株と比較して有意に低い付着率を示した。さらに、マウス経静脈感染を行ったところ、TIGR4野生株感染群はbgaA遺伝子欠失株感染群と比較して有意にマウスの生存率が低かった。これらの結果から、BgaAが肺炎球菌による敗血症において病原因子として働くことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿った遂行を行い、結果が得られていることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き研究計画に沿って実験を遂行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、実験時間の制限が行わるとともに、学会が中止となったため、使用金額が少なくなった。また当初購入予定であった機器が、所属教室の他の予算により購入されたために購入の必要がなくなった。翌年度分は当初の計画に沿って使用するとともに、英語論文投稿を目指し、英文校正費やオープンアクセス費として使用する。
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