2020 Fiscal Year Research-status Report
舌下ワクチン投与による粘膜免疫システム活性化機序の解明
Project/Area Number |
20K23066
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
Chang Emily (張うえか) 日本大学, 松戸歯学部, 専修医 (50875309)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 経粘膜ワクチン / 舌下ワクチン / GroEL / HSP60 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病の一つである動脈硬化は慢性炎症性疾患であり、歯周病は症状を増悪させるリスクファクターの一つである。本研究では予防法として経粘膜投与によるワクチン開発を行った。抗原として代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis) が産生する熱ショックタンパク質(HSP)であるGroELと粘膜アジュバントとしてCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と共に舌下投与 (SLI)させることで血清中および粘膜外分泌液中に抗原特異的抗体を誘導され,歯肉組織の炎症や歯槽骨吸収も抑制された。 これらの結果から、rGroELとCpG-ODNを用いたSLIは, 粘膜および全身系での抗体産生を誘導することにより、歯周病予防に有効なワクチン戦略であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis) が産生する熱ショックタンパク質(HSP)であるGroELは、炎症による破骨細胞の形成を誘導し、歯槽骨の吸収を促進することが報告されている。本研究では,P. gingivalisによって引き起こされる骨吸収に対して,GroELを標的とした粘膜ワクチンが有効であることを示した.メスのBALB/cマウスに,P. gingivalisの感染前に,粘膜アジュバントとしてCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と組換えGroEL(rGroEL)を舌下投与 (SLI)した, P. gingivalis接種の30日後に安楽死させた。rGroELのSLIにより,有意なrGroEL特異的血清中IgGおよび唾液中IgA抗体(Ab)産生が誘導され,約1年間持続した。興味深いことに、GroEL特異的IgA Ab産生細胞は、脾臓よりも顎下腺 (SMG)で10倍多く検出された。脾臓とSMGから分離した抗原特異的抗体産生細胞は、in vitroでの抗原再刺激後に有意に高いレベルのIFN-γ発現を誘導した。フローサイトメトリーでは、CD80, CD86, CD40, 主要組織適合性複合体クラスII分子の発現が増強されたCD11b+樹状細胞の頻度が、SMGで有意に増加したことが示された。さらに,rGroELを用いたSLIは,P. gingivalisによる歯槽骨吸収,P. gingivalis刺激による歯肉でのtumor necrosis factor-α,interleukin-6,HSP60の発現を有意に抑制した。
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Strategy for Future Research Activity |
Porphyromonas gingivalisの口腔内接種により惹起される歯周炎モデルマウスにrGroELを粘膜アジュバントであるCpG-ODNと共に舌下投与したところ血清中および唾液中にrGroEL特異的抗体を産生することが認められた。興味深いことに唾液腺において抗言的抗体産生細胞が脾臓と比べて優位に増加していること認められた。舌下投与による抗原特異的抗体産生誘導することは他の研究グループからも報告されているが、誘導機序についてはまだ不明な点が多い。そこで、口腔底から取り込まれた抗原が口腔周囲の所属リンパ組織,もしくは他のリンパ組織に誘導される経路を検討する。申請者らが所属する研究室には生体で免疫細胞動態が検討可能なモデルマウスを所有している。このモデルマウスにrGroELとCpG-ODNを舌下投与させ、免疫細胞動態を経時的に観察することで抗原特異的抗体産生誘導機序の解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度は国際学会への参加が困難だったため、旅費での差額が生じた。生じた使用額は本研究の試薬購入および論文投稿料に充てる。
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Research Products
(2 results)