2020 Fiscal Year Research-status Report
エナメル質石灰化におけるin vitro解析システムの開発
Project/Area Number |
20K23070
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
但野 愛実 東北大学, 大学病院, 医員 (00885535)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | エナメル芽細胞 / 歯 / 三次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯の発生過程において、エナメル芽細胞は中心的な役割を担っており、エナメル質形成は連続した上皮-間葉細胞の相互作用による細胞の増殖と分化により生じる。また、細胞間接着がエナメル芽細胞の分化に重要であることが知られており、通常行われる平面培養よりも細胞間接着がより密になる三次元培養が歯原性上皮細胞のエナメル芽細胞分化に影響を与えることが示唆されている。実際に、歯原性上皮細胞の三次元培養を行うことで、平面培養では必須であった成長因子の添加を必要とせずにアメロブラスチンやアメロジェニンなどのエナメル基質タンパク質の発現を高めることが報告されているが、その具体的なメカニズムや関連因子には依然として不明な点が多い。 そこで我々は、エナメル質石灰化におけるin vitro解析システムを確立することで、簡便なエナメル芽細胞分化や石灰化を評価するためのモデル作成を目指し、三次元培養下におけるラット由来歯原性上皮細胞株SF2細胞の培養条件の検討を行った。スフェア形成のサイズによる分化への影響を評価するために、エナメル芽細胞分化マーカーであるアメロブラスチンやアメロジェニン等のエナメル基質タンパク質を指標として、培養細胞数や培養日数等の条件に関して検討を行った。 また、その条件下においてエナメル芽細胞分化マーカーの発現解析のために、RT-PCRによりエナメル基質タンパク質の発現を解析したところ、平面培養と比較してアメロブラスチンについて、発現の上昇を認めた。また、三次元培養におけるエナメル芽細胞分化マーカーの局在の確認ために細胞内でのアメロブラスチンの発現を免疫組織学的に検討した結果、すべての細胞においてアメロブラスチンの発現を認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度に関しては、より効率的なエナメル芽細胞の誘導法の確立を目的とし、三次元培養下におけるSF2細胞の培養条件の検討およびエナメル芽細胞分化マーカーの発現解析を行った。培養条件の検討については予定よりもスムーズに目的を達成することが可能であった。しかし、増殖因子の添加の有無による分化の評価については進展しておらず、またエナメル芽細胞分化マーカーの局在をみるために免疫組織学的に検討を行なったが、アメロブラスチン以外のマーカーについての検討を行えていないため、部分的に不足している研究があり、予定としていた計画よりもやや遅れていると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度においては、令和2年度に達成できなかったアメロブラスチン以外の分化マーカーの発現解析に加えて、エナメル芽細胞の具体的な分化誘導因子の同定を行う。培養細胞は、細胞の機能を調節する様々なタンパク質を培養液中に分泌し、エナメル芽細胞分化における歯原性上皮細胞由来の要因には複数の因子が考えられる。直接因子としては、細胞間結合分子、接着因子、さらにエナメル基質タンパク質が考えられ、 間接因子としては、歯原性上皮細胞から培養液中に分泌された増殖因子やそれらの活性調節因子、培養液のpH等が考えられる。より効率的なエナメル芽細胞分化のため、これらのエナメル芽細胞のマーカー遺伝子の発現変化を解析する。
|
Causes of Carryover |
令和2年度は、石灰化の亢進により細胞サンプルの抽出が困難であったため、当初予定していた実験計画よりも、年度内に実施が困難であった研究があった。そのため、前年度に予定していた研究に加えて、本年度予定している遺伝子解析など比較的予算規模の大きい研究を本年度に行う。
|