2020 Fiscal Year Research-status Report
MSCs・Mφ相互作用による組織再生起点メカニズム解明と組織再生加速技術の開発
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20K23080
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田頭 龍二 岡山大学, 大学病院, 医員 (20882640)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / マクロファージ / 免疫調節能 |
Outline of Annual Research Achievements |
インプラント周囲炎や侵襲性歯周炎による歯槽骨破壊は,補綴装置の予知性を減じ,大きな社会問題となっている.その解決策として間葉系幹細胞(MSCs)を用いた組織再生療法が試みられて来たが,その効果には十分な信頼性がなかった.申請者らは,これまでMSCsを再生現場に留め,免疫調節能,組織再生能を付与するには「場の炎症シグナル」が必須であることを明らかにし,一連の 「炎症-再生連関」に関する研究を進めて来た.最近,申請者らは,TNF-a産生を介してマクロファージ(Mφ)とMSCsが相互作用し,Mφ由来の炎症性サイトカインがMSCsの機能を賦活化させ,過剰な炎症性T細胞の抑制や,炎症性サイトカイン産生細胞である1型Mφから,抗炎症性の2型Mφへの極性変化を誘導するという新しい炎症調節カスケードを発見した.本申請では,このMSCsとMφ 相互作用に的を絞り,①Mφ枯渇やTNF-a刺激モデルを比較し,MSCs機能活性化シグナルの分子基盤を解明し,②これにより刺激したMSCsとMφを共培養し,2型Mφへの極性変化を誘導するメカニズムを同定する.さらに,③特定されたMSCsとMφ相互作用により,再生に最適化された場の提供を伴う全く新しい歯周組織再生療法の開発を目指す. 現在、Mφ枯渇による組織再生遅延モデルにおけるMSCs機能低下シグナルの検索マウス長管骨損傷モデルにおいて,クロドロン酸内包リポソームを腹腔内投与することでMφを枯渇させ,TNF-aシグナルを遮断した組織再生遅延モデルの作製および同モデルのHE切片作製および免疫染色,マイクロCT解析を行なっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの予備的検討において,経時的な検討をしてこなかったため,大腿骨損傷後,どのタイミングで最も治癒過程に差が生じるか不明であった.そこで本研究では,受傷後1,3,5日で組織学的に比較し,皮質骨再生に最も差がある受傷後5日を比較ポイントとすることとした.また,これまでの免疫染色の予備的検討では1型マクロファージ と2型マクロファージ の染め分けが詳細に検討できていなかったため,本研究ではシグナルブースターによる各マクロファージ 極性マーカーの増幅を行うと共に,蛍光顕微鏡の対物レンズをより高精細なものに変更することでマクロファージを同定できるようになった.今後はサンプル数を増やしていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はMSCsマーカーである ①PDGFR-a,Sca-1ダブルポジティブ細胞をソーティングし,RNAシーケンシングにより,発現シグナルの差を網羅的に検出すること. ②In vitroではTNF-a刺激モデルにおけるMSCs機能活性化シグナルの検索TNF-aをMSCs培養上澄に添加することでMSCs機能を活性化させる.対照群として,TNF-aを添加しない群を作製し,それぞれのMSCsを回収し,RNAシーケンシングにより発現シグナルの差を網羅的に検出することを行なっていく.その後、①で発現が抑制されており,かつ,②で発現が促進されている因子群をMSCs機能活性化シグナル候補とする.また,活性化シグナル候補群をそれぞれ,マウス骨髄由来MSCsに遺伝子導入,低分子化合物の培養上澄添加などの様々な手法で活性化し,マウス骨髄由来Mφと共培養する.その後,Mφの極性分布をフローサイトメトリーにて解析し,2型Mφの誘導を促進するシグナルをMSCs機能活性化シグナルとして同定していく予定である. そして,上記で同定されたシグナルをブロックすることで2型Mφの誘導が阻害されるかどうか再度共培養で確認していく.
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れているため今年度行う予定であった免疫染色の抗体の購入やRNAシーケンスを来年度行う予定である。
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