2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K23083
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木戸 理恵 徳島大学, 病院, 助教 (60876027)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | Lipocalin2 / 抗菌ペプチド / 好中球 / 歯根膜繊維芽細胞 / 糖尿病関連歯周炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
リポカリン2(Lipocalin2: LCN2)は歯周病や糖尿病において,その発現レベルが上がることが知られている。一方で抗菌ペプチドの機能も有することから近年その働きが注目されている。先の研究にて糖尿病合併症の原因物質であるAGEs (Advanced glycation end-products)が口腔上皮細胞(TR146)のLCN2分泌を上昇させることを報告した。そこで本研究では上皮細胞から分泌されたLCN2が歯周組織の細胞に与える影響について分子細胞レベルで検討を行い,LCN2の歯周炎病態における役割を解明することを目的とした。 歯周組織中に認められる各種細胞についてLCN2のレセプターである24p3Rの発現をウェスタンブロット法により調べたところ好中球様細胞(分化HL-60),マクロファージ様細胞(THP-1),ヒト歯肉線維芽細胞(CRL-2014),ヒト歯根膜線維芽細胞(HPdLF)のうち24p3RのLongとShortの両方発現しているのは,分化HL-60細胞のみであり,24p3RのLong 単独を発現しているのはCRL2014細胞とHPdLF細胞であった。THP-1細胞ではShortもLongも発現は認められなかった。そこで,上皮細胞由来のLCN2の炎症への影響を検討するために分化HL-60細胞とsiRNAにてLCN2発現を抑制させAGEs刺激を加えたTR146細胞の共培養を行い,HL-60細胞の遺伝子発現への影響をマイクロアレイ法にて検討した。結果,BSA添加群では,LCN2遺伝子のノックダウンによりC-C chemokine receptor type3などの発現が2倍以上増加し,FosBなどの発現には有意な低下が認められた。またAGEs刺激群では,有意な遺伝子の発現に増加は認められず,microRNA4299と同130Rの有意な発現低下のみが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞レベルでの糖尿病関連歯周炎モデルを確立するため,実験に使用する適切な細胞種を選択する必要があった。そのため,ヒト歯肉上皮細胞(PGK),TR146,HL-60,CRL-2014,HPdLF及びTHP-1等の6種類の細胞を培養し,それぞれに対して共培養を行なった。この過程で細胞の種類により抽出できるRNAや蛋白量が異なることや,共培養用Dishのサイズの変更や細胞播種濃度,培養日数などの実験の諸条件の決定に想定以上に時間を要した。 しかし,計画している研究遂行に欠かすことのできない重要な実験条件の事項であるため,慎重な選定が必要であるが,研究計画全体としてはその進行に著しい遅延は生じないと考えられる 。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにLCN2のレセプター24p3Rを有する細胞を確認したことから,今後はこれらの細胞を中心に上皮細胞との共培養を行う予定である。現在は上皮細胞とHPdLF細胞を共培養し,HPdLF細胞の炎症性サイトカインの発現への影響について検討を行っている。これらの分析を発展させることにより口腔上皮細胞から分泌されるLCN2の歯周病病態への影響について解明する予定である。糖尿病関連歯周炎の細胞モデル系におけるLCN2の機能の解明に繋げる。具体的にはsiRNAを用いて歯肉上皮細胞のLCN2発現をノックダウンし,dHL-60やHPdLFへのサイトカイン発現や酸化ストレスへの影響,また細胞遊走性,P.g菌の上皮細胞接着抑制作用などLCN2の生体内での生理作用を確認する。
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Causes of Carryover |
当初令和2年度は,上皮細胞と共培養を行った歯周組織中に認められる各種細胞の遺伝子レベルの変化をマイクロアレイ解析,タンパクレベルでの変化をELISAやWBを用いて調べることを予定していた。しかし,マイクロアレイ 分析(外注)や実験モデルの確立に予想外に時間を有したこと,またコロナの影響のため学会がWeb開催になったことにより旅費が不要となったため,次年度使用額が生じた。 次年度は今年度確立した実験モデルをさらに発展させて,遺伝子レベルおよびタンパクレベルでの解析を含めたLipocalin2の機能に関わる研究を進め,その成果を学会で報告できることを目指す。
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Research Products
(1 results)