2021 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍会合性マクロファージによる口腔扁平上皮癌の増殖・浸潤促進機構
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20K23086
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柿添 乃理子 九州大学, 大学病院, 医員 (70876523)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | TAM / OSCC / CD163 / CD124 / CD206 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織は自己の増殖・免疫回避のために、「がん微小環境」を構築し、単球を腫瘍随伴マクロファージ(TAM)へと分化・誘導することが報告されているが、 その詳細についてはいまだ不明であった。本研究では口腔扁平上皮癌(OSCC)の細胞株から放出される液性因子を検索し、TAMへの分化機構について検討した。まずOSCC 組織切片に対して、TAMのマーカーとして知られている、CD163、CD204、CD206に関して免疫染色を行ったところ、浸潤様式に関わらず、腫瘍内部とその周囲にTAMサブセットの発現を認め、蛍光2重染色によりその局在に違いがあることがわかった。次にヒト末梢血単核球から抽出したCD14+単球とOSCC細胞株(HSC-2)をセルカルチャーインサートを用いて共培養したところ、単球の細胞形態が類円形から紡錘形に変化し、細胞数に関しては、共培養していない群と比較して共培養した群では、有意に増加した。培養細胞を回収し、フローサイトにてTAM のマーカーであるCD163、CD204、CD206の発現を検索したところ、CD163とCD204では有意差がなかったものの、CD206に関しては、どの細胞との共培養でも陽性細胞の割合が有意に高くなった。OSCC細胞株の影響により単球がTAM様の細胞に変化したが、それにはOSCC細胞株由来の液性因子が関与していると考えられた。液性因子の同定のため、今回用いた細胞株の培養上清に対してサイトカインアレイを行ったところ、OSCC細胞株の培養上清でIL-8、SerpinE1、Lipocalin-2などの 発現が亢進していた。OSCC由来の液性因子により単球がTAM様の細胞へと分化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究内容については「口腔扁平上皮癌における programmed cell death 1 シグナル関連分子の発現と機能に関 する研究」という題で第39回日本口腔腫瘍学会 総会・学術大会で発表し、優秀ポスター賞を受賞した。第66回日本口腔外科学会総会・学術大会では「OSCCから産生されるIL-8とSerpinE1は腫瘍随伴マクロファージへの分化を促進する」とい題で発表し、優秀ポスター発表賞を受賞した。第75回日本口腔科学会では「口腔扁平上皮癌による腫瘍随伴マクロファージへの分化機構についての検討」という題で発表し、若手優秀ポスター賞を受賞した。
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Strategy for Future Research Activity |
TAMに関する研究の問題点としては、TAM 特異的なマーカーは見つかっていないことにある。今回用いたCD206などのマーカーに関しても、一般的にM2マクロファージとして広く知られているものであるため、CD206陽性イコールTAMとなるわけではない。しかし現状としては、これらのマーカーに頼らざる負えないところがあるため、今後はTAM特異的なマーカーを見つけるために、scRNA-seq解析を行う予定である。OSCC 組織から免疫細胞を抽出し、scRNA-seq 解析を行い、クラスター解析により TAM の細胞集団を同定し、TAM 特異的な分子、もしくは機能に関与する分子を検索、さらにマウスに OSCC 細胞株を投与し、がん微小環境を作り、同定した分子の阻害薬を投与し、がんの増殖や転移について検討する予定である。最終的に、この阻害薬が最終的には、TAMを標的とした治療へと繋がることを期待する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた国内外の学会が中止になったもしくはWeb開催になったことで旅費に充てる使用額が当初の予定よりも少なくなった。また、使用物品についてもOSCC組織を用いた先行実験に時間がかかり実際に抗体を購入および使用する頻度が少なかったため。
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