2020 Fiscal Year Research-status Report
デクスメデトミジンの歯科における安全使用拡大に向けての研究
Project/Area Number |
20K23096
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
橋爪 那奈 日本歯科大学, 生命歯学部, 非常勤講師 (40824066)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | Dexmedetomidine / RSA / α2アドレナリン受容体 / イミダゾリン1受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
Dexmedetomidine(以下、DEX)はα2アドレナリン受容体(以下、α2AD受容体)作動薬として知られ、呼吸抑制が少ない新たな鎮静薬として歯科領域への適用が期待されている。しかし、DEXは循環抑制作用が強く、それにはイミダゾリン1受容体(以下、I1受容体)の関与が示唆されているが、呼吸の維持についてその詳細な機序はいまだ不明である。申請者は、ラット新生仔実験において、DEXによるI1受容体の刺激が心拍数を減少させるだけでなく、呼吸の駆動力を増加させることを見出した。 現在、本研究では、成熟ラットを対象にバロメトリック法を用いて自発呼吸を測定し、さらに尾動脈カテーテルを介して新生仔では採取不可能な血液ガス(PaO2、PaCO2、pH)と平均動脈圧の測定を行った。その結果、DEX投与量の違いによって平均動脈圧の反応に差異が生じることを確認した。また、DEXの影響としてPaO2の低下、PaCO2上昇およびpH低下などの動脈血液ガス動態の変動と血中グルコース濃度の上昇を確認した。 今後、成熟ラットに対してDEX投与後にα2AD受容体の選択的競合拮抗薬であるatipamezoleとα2AD受容体とI1受容体の競合拮抗薬であるefaroxanを追加投与し、DEXの呼吸循環抑制効果に対する各々の拮抗作用を調べ、比較検討を進める。さらに、循環と呼吸の相互作用の指標となる呼吸性不整脈(RSA、respiratory sinus arrhythmia)についても解析を加えることにより、DEXが呼吸循環系に与える作用、すなわち比較的軽い呼吸抑制作用と強い循環抑制作用、が呼吸と循環の相互作用およびO2・CO2のガス交換効率に対してどのような影響をおよぼすか検討し、考察を加える。また、呼吸循環中枢の存在する脳幹部を対象とした免疫組織化学的検討を行い、I1受容体やα2AD受容体などの発現の特徴についても検証してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
成熟ラットに対してDEXを投与し、バロメトリック法を用いた自発呼吸の測定と尾動脈カテーテルを介した脈拍数、血圧および血液ガス等の測定を行い、各値の変動を確認した。 しかし、令和2年度に予定していた拮抗薬投与による測定は、新型コロナウイルス感染症流行の為、実験可能日の削減を余儀なくされ、進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、令和2年度に遂行できなかった実験、すなわち成熟ラットを対象として、DEX投与後にα2AD受容体の選択的競合拮抗薬であるatipamezoleあるいはα2AD受容体とI1受容体の競合拮抗薬であるefaroxanを追加投与しDEXの呼吸循環抑制効果に対する各々の拮抗作用を調べ、比較検討を進める。また、RSAの解析と呼吸循環中枢の存在する脳幹部を対象とした免疫組織化学的検討を加え、I1受容体やα2AD受容体などの発現やその局在性およびその特徴について検証していく。
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Causes of Carryover |
令和2年度当初計画で成熟ラットへの拮抗薬投与実験と免疫組織化学的検討を行う予定だったが遂行できず、その分の物品(試薬および消耗品)や実験動物の購入を見送った為。令和3年度中に同物品を購入する予定である。
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