2020 Fiscal Year Research-status Report
内在性MSCsの免疫調節能障害メカニズムの解明とインプラント周囲炎の新規治療戦略
Project/Area Number |
20K23109
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黄野 頂策 岡山大学, 大学病院, 医員 (60882644)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 間葉系幹細胞 / 免疫調節能 / インプラント周囲炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔インプラント治療は欠損機能回復法のひとつとして広く定着した。その一方でインプラント周囲炎による歯槽骨破壊が大きな社会問題となっている。インプラント周囲炎の発症メカニズムは未だ解明されておらず、抜本的な治療法の開発が急務である。申請者らは、慢性炎症性疾患である歯周病の組織破壊に、内在性間葉系幹細胞(MSCs)の免疫調整能の低下が関与している可能性を見出した(Aung et al., 2020)。本研究課題の解決のため、本年度は、マウスインプラント周囲炎モデルの作製及び同モデルのHE切片の作製及びマイクロCTでの解析を行った。また加齢や個体差によるMSCsの免疫調整能の低下が、インプラント周囲炎における骨組織破壊を引き起こす機序を解明することを目的として50周齢マウスに対して同様のインプラント周囲炎モデルの作製を行なった。今年度はC57BL6/Jマウスインプラント周囲炎モデルの作製を行い、インプラント周囲炎モデルを安定して作製できる環境を整えSCs可視化(Cxcl12-GFP)遺伝子改変マウスにおいて同様のモデルを作製し解析することを見据えた。具体的には、①MSCs可視化(Cxcl12-GFP)遺伝子改変マウスにおいて実験的なインプラント周囲炎を惹起させ、MSCsの集積、炎症性細胞浸潤、破骨細胞数等の関連を免疫組織学的に評価するとともに、②若齢と高齢群のインプラント周囲炎肉芽組織を採取し、Cxcl12-GFP陽性細胞であるMSCsを回収、免疫調節能を直接比較、MSCsの免疫調節能とインプラント周囲組織破壊に関連が認められるかを検討した。さらに、③MSCsの免疫調節能に両群で差が認められた場合にはその責任遺伝子を同定、免疫調節能を賦活する方を見付けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの予備的検討では下顎第一臼歯抜去後にチタン製擬似インプラント体を埋入していたが,想定していたよりも骨結合獲得率が低く,インプラント周囲炎との比較対象である非誘導群のベースラインが安定しなかった.そのため,マウスのインプラントモデルの作製を下記の手順で見直すこととした. 上顎第一臼歯を抜歯し,3週間の骨治癒後に実験用のチタン製擬似インプラントを埋入し,骨結合獲得(3週間)を待つ.骨結合確認の後,6-0絹糸を結紮することで骨吸収を誘導する.尚,絹糸を結紮しない群をコントロール群とする.骨吸収誘導後,10日経過時点で屠殺し,上顎骨を回収する.マイクロCTによる骨吸収量の測定パラフィン切片を作製し,骨結合の確認を行なったところ,安定した骨結合獲得率を得ることができた.したがっていよいよ本研究課題の大きな研究目標である①MSCs可視化(Cxcl12-GFP)遺伝子改変マウスにおいて実験的なインプラント周囲炎を惹起させ,MSCsの集積,炎症性細胞浸潤,破骨細胞数等の関連を免疫組織学的に評価するとともに,②若齢と高齢群のインプラント周囲炎肉芽組織を採取し,Cxcl12-GFP陽性細胞であるMSCsを回収,免疫調節能を直接比較し,MSCsの免疫調節能とインプラント周囲組織破壊に関連が認められるかを検討する.さらに,③MSCsの免疫調節能に両群で差が認められた場合にはその責任遺伝子を同定,免疫調節能を賦活する方を見付ける.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としてはマウスのサンプル数を増やし,Cxcl12-GFPマウス(5週齢,大阪大学,長澤教授より提供)の上顎第一臼歯を抜歯し,3週間の骨治癒後に実験用のチタン製擬似インプラントを埋入し,骨結合獲得(3週間)を待つ.骨結合確認の後,6-0絹糸を結紮することで骨吸収を誘導する.尚,絹糸を結紮しない群をコントロール群とする.骨吸収誘導後10経過時点で屠殺し,上顎骨を回収する.マイクロCTによる骨吸収量の測定および凍結切片を作製し,GFP陽性MSCsの分布を確認する.また,蛍光免疫染色によりCD3陽性T細胞,B220陽性B細胞の分布を確認し,MSCsの分布との関連性を明らかにする.破骨細胞の分布は脱灰後にパラフィン切片を作製し,TRAP染色により確認する.炎症を惹起しないコントロール群と経時的に比較する.またインプラント周囲炎モデルを,週齢の異なる50週齢でも同様に作製し,歯槽骨破壊程度をマイクロCTによる骨形態計測で,MSCsの集積,炎症性細浸潤,破骨細胞形成程度を組織学的細胞数カウントにより比較する.若齢群と加齢群のインプラント周囲炎の肉芽組織をサンプリングし,Cxcl12-GFP陽性細胞であるMSCsをソーティングし回収する.まず,免疫調節能に関係することが知られている遺伝子(TGF-b, IL-2, IL-10, MCP-1, FASL等)の発現レベルを比較する.次に,これらの遺伝子発現の差を網羅的に解析するためにRNAseqで比較する.また,明確に差があった原因遺伝子を若齢マウスMSCsでsiRNA等によりノックダウンすることにより,50週齢MSCsの免疫調節機能の低下が誘導されることを確認し,免疫調節に関係する責任遺伝子を同定する.
|
Causes of Carryover |
予備的検討の結果、マウスのインプラントモデルの作製を見直すことになったため、次年度使用が生じた。 使用計画としては、今後の研究の推進方策に準じてマウスのサンプル数を増加、xcl12-GFPマウス(5週齢、大阪大学、長澤教授より提供)、それに伴う擬似インプラント体の作製のために使用する。 また次年度予定している当研究の学会発表に関わる諸経費、論文の雑誌掲載に関わる諸経費に使用予定である。さらに今後本研究で予定している、若齢群と加齢群のインプラント周囲炎の肉芽組織をサンプリングし、Cxcl12-GFP陽性細胞であるMSCsをソーティングする際に用いるRT-PCRに用いる抗体等(TGF-b、IL-2、 IL-10、 MCP-1、 FASL等)を含めた諸経費、その後予定しているマウスの遺伝子発現の差を網羅的に解析するためにRNAseqに関わる諸経費、また、原因遺伝子を若齢マウスMSCsでsiRNA等によりノックダウンするノックダウンマウスの作製に用いる諸経費に使用予定である。
|