2020 Fiscal Year Research-status Report
薬物性歯肉増殖症におけるブチリデンフタリドの治癒効果の検証
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20K23111
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
畑野 紗希 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (40882014)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ブチリデンフタリド / NR4A1 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物性歯肉増殖症は抗てんかん薬(フェニトイン)、Ca拮抗薬、免疫抑制薬(シクロスポリンA)を内服する患者に見られる副作用で、歯肉の過形成を特徴とした歯周疾患である。現在の治療法は変薬や歯肉切除術であるが、抗てんかん薬や免疫抑制薬、コントロール良好な降圧剤は変薬が困難である。さらに、切除術は重度の全身疾患患者には適応できない。変薬や切除術を必要としない新規治療法が求められている。 研究代表者はこれまでに、in vitroの系で歯肉増殖症の再現が可能なモデル作製に成功しており、シクロスポリンA、フェニトイン、Ca拮抗薬すべての薬剤で発症する歯肉増殖症に、核内受容体NR4A1の機能抑制が関与していることを明らかにした。そこでNR4A1の発現を上方制御することができれば、3つの薬剤で発症する歯肉増殖症を改善させることができると想定した。またin vivoの系においては、臨床所見に近いシクロスポリンA誘導性歯肉増殖症モデルマウスを確立し、そのモデルマウスにNR4A1のアゴニストであるシトスポロンBを作用することで、歯肉肥厚の改善とNR4A1のmRNA発現の減少の抑制を確認している。 今後臨床応用されることを想定し、現在、薬物性歯肉増殖症のin vivo, in vitroモデルに、NR4A1の発現を上昇できることが報告されている化合物ブチリデンフタリドを含んだ漢方であるトウキを作用させ、その治癒効果を検証している。既に安全性が確認され使用されている生薬であれば、増殖症に対しての臨床応用もスムーズに進むと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vivoにて、歯肉増殖症モデルマウスにNR4A1のアゴニストであるシトスポロンBを作用し、歯肉肥厚の改善とNR4A1のmRNA発現の減少の抑制を確認できたことにより、NR4A1を上方制御することでの歯肉増殖症の治癒傾向が確認できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
In vivoでは、シクロスポリンA誘導性歯肉増殖症モデルマウスの歯肉増殖部位に、ブチリデンフタリドもしくは漢方トウキを皮下もしくは腹腔内に直接、またはメチルセルロースに懸濁した状態で局所投与し、歯肉増殖の程度、コラーゲン産生量、歯肉中のNR4A1およびTGF-βの標的遺伝子Pai1の発現をreal-time PCRで調べる。 In vitroでは、まずNR4A1の発現を上昇させることで、増殖症を改善できるか確認する。ヒト歯肉線維芽細胞にNR4A1の過剰発現ベクター導入、もしくはNR4A1のアゴニストであるシトスポロンBを作用することで、TypeⅠコラーゲンの発現、産生量を抑制できるか検討する。そして次に、ブチリデンフタリドもしくはトウキがヒト歯肉線維芽細胞のNR4A1発現を上昇させるか調べる。NR4A1の発現上昇が確認できれば、上記モデルを用いてブチリデンフタリドもしくはトウキによるコラーゲン発現に及ぼす影響を評価する。
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