2021 Fiscal Year Annual Research Report
社会的ストレスを起因とする疼痛下行抑制系経路の変調
Project/Area Number |
20K23120
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
川崎 詩織 日本大学, 歯学部, 専修研究員 (30876397)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | コリン作動性ニューロン / ムスカリン受容体 / GIRKチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】ムスカリン性受容体が機械痛覚過敏に関与していることが報告されているが、中枢においてアセチルコリン(Ach)が疼痛制御にどのような影響を与え得るのかについては不明である。そこで本研究では慢性痛に関与すると考えられている中脳水道周囲灰白質腹外側部(vlPAG)に着目し、同部に位置するコリン作動性ニューロンの電気生理学的特徴と、ムスカリン性コリン受容体作動薬および拮抗薬による電気生理学的特性の変化について検討した。 【研究方法】実験にはVGAT-Venus-ChAT-TdTomatoトランスジェニック・ラットを用いた。同ラットのvlPAGに存在するコリン作動性ニューロンはTdTomatoにより標識されていることから容易に同定できた。ムスカリン受容体の活性化にはcarbachol(10 μM)を用い、遮断薬には pirenzepine(M1拮抗薬;2μM)、gallamine(M2拮抗薬;10 μM)、J104129(M3拮抗薬;50nM)、AF-DX387(M2/4拮抗薬;1μM )、PD102807(M4拮抗薬;5μM)を用いた。静止膜電位、入力抵抗、発火頻度を記録し、上記作動薬および拮抗薬の作用を評価した。すべての記録はホールセル・パッチクランプ法を用いて電流固定下で行った。 【結果】Carbacholの投与は、静止膜電位を急速に過分極させ入力抵抗及び発火頻度を減少させた。各拮抗薬を灌流投与後にCarbacholを潅流投与すると、M2拮抗薬により急速な過分極と入力抵抗の低下が抑制された。また急速な過分極を引き起こしたことからG蛋白質活性型内向き整流性カリウムチャネルの関与が示唆された。中脳水道周囲灰白質は疼痛制御の要衝であり、本研究で得られた成果は既存の疼痛治療に対して抵抗性のものに対して新たな創薬ターゲットとして期待される。
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