2020 Fiscal Year Research-status Report
三重県における高齢漁師たちの生きる論理に関する人類学的看護研究
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20K23210
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
松崎 かさね 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 助教 (20881684)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | フィールドワーク / 漁師 / 高齢者 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付が決定となった9月から3月末までの研究の進捗は大きく2点に分けることができる。 まず1点目は文献調査についてである。主に三重県立図書館および調査対象とする地域にある公立図書館などを利用し、民俗学的な文献(地域ごとの方言、食文化、祭り、昔話などに関するもの)や漁業に関する資料(漁港の規模や漁獲量などに関する統計的資料、地域の漁の歴史、漁師や伊勢の海女を対象とした聞き語り資料などを含む)を収集した。また、漁業を対象に調査を行った人類学および民俗学的文献を収集し、当該研究がどのように位置づけることができるかを検討した。 2点目は現地での人々を対象とした現地調査についてである。研究代表者はある漁港に通い、そこにいる漁師らの日々の様子を観察(定点観察)し、一日の活動の様子や季節ごとに行われる漁の様子について把握することに努めた。また、ある漁港で知り合った若い漁師からワタリ蟹漁、底引き漁、ハマチや鰆の一本釣り漁の方法などを学んだ。また、その漁師との付き合いを通して、どのようにして漁師になれるのか、漁のために必要な諸手続、そしてその地域における漁業がおかれている現状についても少しずつ理解していくことに努めた。ここ数年は漁獲量がなかなかあがらない現状があると聞いているが、その原因などについては今後の調査を通して明らかにしていく予定である。 同時に、研究代表者は所属機関の研究安全倫理審査を受け、調査の承認を得た。そのうえで調査地域の漁業組合長とコンタクトを取り、調査協力の依頼を行い、研究協力者の紹介を受けた。今後はその研究協力者への調査を進めていく予定である。現状として、研究代表者は漁師たちの「気質」のようなものにも着目しており、これについては今年度学会発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大が収まりを見せない中での調査であり、積極的に進めることが難しい状況にあった。特に、研究代表者は看護学部に所属しているため、病棟実習指導のために日頃から厳しい行動制限を行う必要があるということと、同時に本調査の対象とするのが高齢者ということもあり、調査においては感染対策に十分注意をする必要があった。 また文献調査に関しても、所属機関の方針により県外への移動が禁止されているため、名古屋大学付属図書館など、比較的文献が揃っている図書館には行くことが叶わず、またそうした図書館も現在では学内者のみの利用となっていることから従来のようには利用できない状況が続いており、調査ができるところから進めているような状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き文献調査を進め、調査地域の概要や漁業に関する資料を集めるととに、研究テーマの軸になる概念枠組みを探していくこととする。それとともに、フィールド調査の方も進めていき、現在の漁の状況に至るまでの高齢漁師のライフヒストリーなどを仕上げていきたいと考えている。 また今年度は今のところ、老年社会学の学会での発表と、文化人類学の研究会での発表を控えていることから、それらの準備を通して高齢漁師たちをどのような視点から眺めるかについて考えをまとめていく作業に取り組んでいきたい。
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Causes of Carryover |
文献を購入ではなく、図書館からの現物貸借で済ませられたものがあり、安価で手に入れることができた。繰り越しとなった金額は、次年度の文献調査費として使用する予定である。
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