2021 Fiscal Year Research-status Report
三重県における高齢漁師たちの生きる論理に関する人類学的看護研究
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20K23210
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
松崎 かさね 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 助教 (20881684)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 漁師 / 高齢者 / 漁業 / 日本 / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、三重県で漁をする高齢漁師らの、老化による心身の衰えを抱えながらも漁を続けることを可能にしている生きる論理を見いだすことである。 2021年度は主に日本における人類学や民俗学の漁師に関する先行研究、調査対象としている漁港に関連する統計データの収集に加え、調査地の日々の様子観察および漁師に対するインタビュー調査を実施した。 これまでの調査で特に明らかとなったのは、以下の点である。①主な調査対象としている漁港は、かつてはその地域で最も栄えていたものの、近年魚が獲れなくなってきており、今後は最も早く漁師がいなくなる見通しであること、②長く漁師をしてきた彼らの一番の関心は①にあること、③魚が獲れなくなった原因としては海岸の埋め立て、生活排水やゴミによる汚染、近隣の川をせき止める河口堰が生態系を変えていることが挙げられていること。ただし、P港の漁師らは、上記のように特定の原因を探しながらも今の現状を「自然の摂理」「何が悪いというわけでもない」とも語っており、人間による開発と海の生態系のはざまで漁師を続けてきた彼らなりの了解の仕方があることが明らかとなった。なお、この調査の成果は、中部人類学談話会第260回例会にて発表した(タイトル:「東海地方の伊勢湾に面したある漁港の終わり」)。 現在、研究代表者が関心を持っているのは、ある漁師の「まあ、漁師というのは死ぬ時は死ぬ時やっちゅう考えの人が多いからな」という言葉である。こうした自分自身への捉え方は、彼らが長年漁をしてきた漁港に対する理解の仕方ともリンクしているように思われる。2022年度はさらに調査を続け、考察の方向性を定めていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
休日に調査が限られることに加え、近年の漁獲量の減少にともない漁港に人がいる日がかなり限られており、漁港に誰もいないことを確認するだけになってしまうことも多く、調査がスムーズに進んでいるとは言えない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、まだ漁港やそこの高齢漁師について詳細な情報収集を行う必要があるため、今後も調査をすすめながら論点を定めていきたい。現在はまだ漁が解禁となっていないが、解禁となり次第、実際の漁についての調査をすすめていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
調査終了時に謝金等が必要となるため、その分を残して次年度に繰り越すこととした。
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