2021 Fiscal Year Research-status Report
Building a maternal and child health support system in the disaster and evacuation with the emerging infectious diseases
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20K23230
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
吉田 穂波 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (20626113)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 災害時母子支援 / 福祉避難所 / COVID-19感染拡大予防 / 妊産婦・乳幼児・子育て世帯 / 被災母子保健 / 避難生活支援 / 避難所マッピング / オンライン公開 |
Outline of Annual Research Achievements |
災害時に住民が安全な場所に避難し、健康を損なうことなく普及、復興フェーズに進むためには、個々の避難生活ニーズに沿った環境整備を行う必要がある。今回特に重視するのは、集団生活がかえって身体・精神面に負荷をもたらすことが分かっている妊産婦・乳幼児・子育て世帯である。彼女彼らの心理的安全性に基づく避難環境を確保し、気疲れや気兼ねを排除して災害直後心身ともに負担の大きい時期を乗り切る支援をするためには、細やかな個別避難・在宅避難支援体制の整備を行う必要がある。これらの個別具体的な避難支援を可能にするための地域資源を明らかにし、地域事情に適合させるため、本研究では、パンデミック下の感染拡大下で増加すると考えられる在宅避難家族に対する支援に着目し、地域の持つ資源や支援体制等について検討すると共に、在宅避難家族への配慮や支援を進めるための課題抽出を行った。 まず、COVID-19感染拡大の状況において妊産婦や乳幼児の避難生活に必要とされる要因をレビューし、環境因子、ヘルスケア因子、メンタルヘルス因子等に分類した。 また、東京都の母子を対象とした災害時福祉避難所について、都内23区の地域防災計画から、その所在地と設備を地図上に落とし込み、その中で母子に特化した福祉避難所を整備している5市区町村(新宿/千代田/荒川/文京/世田谷区)に対して、福祉避難所の考え方、運用方法、物資、設備の整備状況に関するヒアリングを行った。 結果として、東京都23区の妊産婦・母子向けの避難所の整備状況や当事者への周知方法、大規模集約型施設、小規模分散型施設等の形態の違いなどが明らかとなった。 また、平時から福祉避難所の位置情報を広く伝えるために、妊産婦・母子の自助啓発WEBサイト「giftfor」において、東京都23区の福祉避難所(母子向け)の設置状況を可視化し、防災知識を高める冊子やクイズ等を利活用できるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンデミック禍の中で、福祉避難所が必要な要配慮者でありながら、サポートが十分とは言えない妊産婦・乳幼児・子育て世帯を対象として、災害時福祉避難所の情報を整理し、現状と課題を明らかにできた。まず先行論文や記事等から、国内の災害時母子支援の取り組みや福祉避難所整備状況をレビューした。また、各区の地域防災計画の閲覧や問い合わせを行い、福祉避難所の対象者、数を調査した。その中で母子に特化した福祉避難所を整備している5市区町村(新宿/千代田/荒川/文京/世田谷区)に対して、福祉避難所の考え方、運用方法、物資、設備の整備状況に関するヒアリングを行い特徴を類型化した。 次に、福祉避難所の現状を広く伝えるために、平時から備えることの大切さを伝えるWEBサイト「giftfor」を構築し、東京都23区の福祉避難所(母子向け)の所在地(220か所)と設備を地図上に落とし込んだ。 最後に、福祉避難所マップの情報を追加・整理した上でマップの有用性をアンケート調査し評価し、福祉避難所の現状と課題を踏まえ、今後の福祉避難所の発展に何が必要とされているか検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展望としては、妊産婦・乳幼児・子育て世帯向けの避難所の情報の更なる収集と、情報共有を行う。現在は東京都23区のみの情報収集、共有であるが、これを全国の基礎自治体に広げ、マッピングを進め、全国どこで子どもを産み育てても平時から福祉避難所の位置や設備を把握し、災害時にはスムーズに避難できるような体制を推進する必要がある。また、避難所避難だけでなく在宅避難の子育て家庭に対しても物資や人材の支援を可能とするシステムの構築を行い、避難所に関する情報を広めることで、避難所を運営する自治体における妊産婦・乳幼児・子育て世帯の受援力と防災意識向上を図る。 当初はオンラインHUG研修を利用してモデル自治体におけるパンデミック下の避難行動におけるシミュレーションを行う予定であったが、緊急事態宣言や蔓延防止政策等により集合型・対面研修ではなくオンラインのヒアリングに制限をした。今後、地域における避難環境として在宅避難や旅館等の宿泊施設の利用、親せきや友人宅等の社会的ネットワークの利活用など、多様な避難環境を検討し、提案する予定である。 また、本研究で利用した「giftfor」などのWEBサイトを使って情報発信を継続的に行い、妊産婦・乳幼児・子育て世帯が全国どこにいても防災情報を入手できるような基盤整備を行う。
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Causes of Carryover |
当初はオンラインHUG研修を利用してモデル自治体におけるパンデミック下の避難行動におけるシミュレーションを行う予定であったが、緊急事態宣言や蔓延防止政策等により集合型・対面研修ではなくオンラインのヒアリングに制限をしたため、旅費や研修経費を次年度に回し、シミュレーションによる妊産婦・乳幼児・子育て世帯向けの避難環境の効果検証を行う。
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