2021 Fiscal Year Research-status Report
運動歴は高齢期の骨格筋機能へ影響するか?-運動種目と実施年代に着目してー
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20K23261
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田端 宏樹 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (50876886)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | サルコペニア / 骨格筋機能 / 運動歴 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は若年期および高齢期の運動習慣の組み合わせが高齢期のサルコペニアおよび骨格筋機能に与える影響を検討した。 文京区在住の高齢者を対象とした観察型コホート研究“Bunkyo Health Study”のベースライン測定に参加した65~84歳の男女1607名(男性679名、女性928名)のデータを解析対象とした。アジアサルコペニアワーキンググループのサルコペニア診断基準2019を参考に、サルコペニア、低筋量、低筋力パフォーマンスを定義した。思い出し法による運動習慣のアンケート調査結果を基に、対象者を中学校または高等学校と現在の運動習慣の有無との組み合わせにより若年なし-現在なし(NN群)、若年なし-現在あり(NA 群)、若年あり-現在なし(AN群)、若年あり-現在あり(AA群)の4群に分けた。NN群を参照群とした際の各群のサルコペニア、低筋量、低筋力パフォーマンスの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰分析により算出した。 男性ではNN群に対してNA群、AN群では有意な差はなかったが、AA群でサルコペニア(OR: 0.29, 95%CI: 0.09-0.98, P = 0.046)、低筋量(OR: 0.23, 95%CI: 0.10-0.57, P = 0.001)、低筋力パフォーマンス(OR: 0.53, 95%CI: 0.29-0.98, P = 0.042)のオッズ比が有意に低かった。女性でもNN群に対してNA群、AN群で有意な差はなかったが、AA群では低筋力パフォーマンス(OR: 0.47, 95%CI: 0.27-0.82, P = 0.008)のオッズ比が有意に低かった。 本研究の結果、若年期および高齢期の運動習慣の組み合わせは高齢期の骨格筋機能と関連し、特に男性ではサルコペニアの有病率の低値とも関連する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は地域在住高齢者コホート“文京ヘルススタディ―”のフィールドを活用して、過去および現在の「運動歴」と高齢期の骨格筋機能との関連を明らかにすることである。 2021年度は若年期および高齢期の運動習慣の組み合わせとサルコペニア、骨格筋量、骨格筋力パフォーマンスとの関連を検討した。ここまでの研究成果は2つの国内学会で発表し、現在論文化を進めている。しかし、運動種目と骨格筋機能との関連は十分検討できておらず、今後引き続き解析を実施する予定である。また、2020年10月より始まった5年後の追跡測定も未だCOVID-19の感染状況が落ち着かないのもあり、当初予定していたよりも参加人数が少ない状況である。それゆえ、本研究の進捗状況はやや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も昨年度までと同様に文京区在住の高齢者を対象としたコホート研究“文京ヘルススタディ―”と連携してデータの測定および解析を行う。2022年度は2017年度にベースライン測定に参加した約400名を対象に5年後の追跡測定を実施する。測定と並行して2021年度に実施した若年期および高齢期の運動習慣の組み合わせとサルコペニア、骨格筋量、骨格筋力パフォーマンスとの関連について論文投稿を実施する。さらに、運動種目と高齢期の骨格筋機能との関連の検討および若年期と高齢期だけでなく生涯にわたる運動実施状況と高齢期の骨格筋機能との関連の検討を実施し、2022年10月に名古屋で行われるアジアサルコペニアフレイル学会、2022年11月に米国インディアナポリスで開催される米国老年学会にて学会発表をする。その後、学会発表で得られた助言を参考に研究成果を論文としてまとめあげる。
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Causes of Carryover |
本研究課題は文京区在住の高齢者を対象としたコホート研究“文京ヘルススタディ―”と連携して実施している。2021年度もCOVID-19感染拡大の影響により、測定に来て下さる参加者数が当初予定よりも大幅に少なく、測定に掛かる費用が少なかった。また、国際学会等が中止や延期となり学会参加費および渡航費支出が生じなかったため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は研究成果発表や遅れている分の測定経費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)