2023 Fiscal Year Annual Research Report
産後うつ予防を目指すプレシジョン・ヘルスを視野に入れた妊娠期食生活の解明
Project/Area Number |
20K23275
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Research Institution | Kyoto Kacho University |
Principal Investigator |
林 育代 京都華頂大学, 現代家政学部食物栄養学科, 准教授 (30878517)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 産後うつ / 妊娠性貧血 / 高炎症食 / DIIスコア |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年4月から2018年4月に、産後1か月健診でエジンバラ産後うつ病自己調査票に回答した精神科受診歴のない単児出産日本人産褥婦を対象とした。本研究は最終的に、妊娠性貧血と産後うつとの関連に着目し、妊娠前体重、妊娠中の体重増加量やヘモグロビン(Hg)値が得られた225名を解析対象とした。 産後うつ群は11.6%であり、このうち妊娠中期にHg10.0g/dL未満の中等度貧血の者が19.2%と、非うつ群の7.5%と比し有意に高率であった。中期の貧血と産後うつとの関連は、初産、妊娠前体格、妊娠中体重増加量による調整後も有意であった(調整オッズ:5.43、95%CI:1.11-25.66)。さらに中期貧血群と非貧血群の栄養素等摂取量を比較したところ、鉄摂取量をはじめ、いずれの栄養素も2群間で差はなかった。 鉄吸収はヘプシジンによって調整され、炎症状態の亢進で吸収が抑制されることから、新たな食事因子の指標として食事性炎症スコア(Dietary Inflammatory Index: DII)を用いて評価したところ、貧血群で有意に高炎症性の食事性向を示し(DIIスコア;2.91 vs. -0.36, p=0.007)、鉄サプリメントの利用や妊娠前体格、妊娠中体重増加量による調整後も有意な関連を示した(調整オッズ:1.91、95%CI:1.16-3.14)。 これらより、妊娠性貧血は産後うつのリスク因子であり、妊娠期の食生活として低炎症食とすることは、貧血緩和を介して産後うつの低減につながることが期待される(2023.学会発表)。また、妊娠性貧血と高炎症食との関連は妊娠が進むにつれて強まること、妊娠糖尿病ではさらに顕著であること、TMPRSS6遺伝子のrs2235321がHg値に関連することを見出し、DIIによる食事評価が妊娠転帰の改善に役立つ可能性を報告した(2023.論文発表)。
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