2020 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Parallel Pseudorandom Number Generator for Cryptographic Applications
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20K23327
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小寺 雄太 岡山大学, 自然科学研究科, 特任助教 (70880623)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | Blum-Micali法 / Gauss周期 / 並列乱数生成法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は乱数生成手法の中でも暗号学的に安全性が証明されているBlum-Micali法に着目し,その改良を検討するものである.具体的には,従来のBlum-Micali法では安全性が担保される反面,スループット(1-bitあたりの出力値を生成する際に必要となるコストパフォーマンス)が低く実用的でない生成法として扱われていた.しかしながら近年になり,計算機の大幅な性能向上に加え並列化技術が発展したことにより,非効率的な処理も並列化することで,全体としての処理性能向上を図ることが検討されている.このような背景から本研究はBlum-Micali法を並列化し,その実用性向上を目的とした温故知新的な研究であるといえる. 初年度ではBlum-Micali法を並列化する際に使用するガウス周期に焦点を当て,並列生成可能なアルゴリズムの開発を行った.具体的には,BlumとMicaliにより提案されている有限体上での乗法的構造とハードコア述語と呼ばれる一方向性を用いた乱数生成法に焦点を当て,ここへGauss周期の仕組みを取り入れることで本来のBlum-Micali法を並列生成可能なように改変した. 2年目では統計的乱数性評価や使用可能なパラメータの探索などを中心に行う予定であり,その準備を進めつつ,乱数の応用先となるプロトコルの開発なども行い国際学会発表を行った.詳細には,提案手法をC++言語およびNTLにより並列実装した.また,評価の際に使用することを想定している物理乱数に関する研究や,擬似乱数系列の複雑度評価に利用される線形複雑度に関する研究も併せて実施しており,2021年4月現在で,3件の国際学会発表が採択決定(未発表)となっており,1件の論文が投稿中(査読中)である. 以上が初年度の成果報告の概要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度となる令和2年度では研究計画通りBlum-Micali法をまずは数学的に見直し,その構造の解析を行うとともに,有限体上の乗法的特性との親和性を確認した.その際には,有限体上のベクトル空間で基底を構成する際にしばしば用いられるGauss周期と呼ばれる特性を利用した.より具体的にはGauss周期では1の原始根を用いて乗法的に部分群同士を関連付け,任意の拡大次数をもつ正規基底を構成することにしばしば用いられる.この乗法的特性をBlum-Micali法の乗法的生成手法へ導入することで,少ない条件のもと任意の並列数を指定して乱数を生成する手法を提案した. また,令和3年度に向けて本手法を実装し,利用可能なパラメータ探索にも着手している.これは提案手法の性質上,処理の並列化を行った際に複数ないしすべてのプロセスが同じ系列を生成し始めることを防ぐため,使用できるパラメータに制限をかけている.これに起因して利活用可能なパラメータを効率的に探索する手法を検討することは評価や実用化の面で重要な課題といえる. 2年目となる令和3年度では想定通り,上記のパラメータ探索に加え,統計的な乱数検定ツールなどを活用しつつ,生成される系列の評価を進めていく予定である. 以上のことから,本研究の初年度における実施状況は概ね予定通りであると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように提案したBlum-Micali法の並列生成法(以下BMGP(Blum-Micali algorithm based on the Gauss Periods)と呼称)では,生成の際に原始元と呼ばれる有限体上の特殊な元が利用される.この原始元はGauss周期での生成パラメータにもなっており,条件を満たすものを探索する必要がある. BMGPの実用化も視野に入れるため,本課題を解決する方針として,現在では2つの方向性を模索することを考えている.1つ目は楕円曲線法などの素因数分解アルゴリズムを用いた効率的な原始性判定を行う方法である.具体的には,原始性を判定するためには有限体上の元の位数と呼ばれる周期長を調べる必要があり,その周期長を素因数分解することで余剰な検証を削減することができる.これにより効率的なパラメータ探索を行うことができる考えており,検証を進めている. 2つ目は任意の有限体上の原始元から条件を満たすものを生成する方法である.本手法は構想段階であるものの,数学的な困難性がないことを示すことができれば先の素因数分解よりも効率的にパラメータたんさくを行うことができると考えている.本手法の実現可能性については,2年目となる令和3年度に統計的な乱数評価を行うのと並行して検討する予定である. 最後に,令和3年度での中核的な内容となる乱数性評価に関する方針を示す.本研究での乱数性評価は一様性や予測困難性などに焦点を当て,NISTが提供する検定ツールやモントリオール大学の研究者らにより開発されたTestU01などを用いて検証を行う予定である.加えて,物理乱数との判別可能性の観点からも検証を行い,並列化のみならずその評価までを一連の行程として行っていく.
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Research Products
(1 results)