2020 Fiscal Year Research-status Report
友人関係と興味関心の変化の相互作用を捉えたソーシャルネットワークの長期予測モデル
Project/Area Number |
20K23337
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
伊藤 寛祥 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (90875741)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ソーシャルネットワーク予測 / グラフデータマイニング / 時系列データ解析 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はSNSなどに存在するソーシャルネットワークの変化を長期的に予測できる数理モデルの考案である.ソーシャルネットワークの変化とは,ユーザ間の友人関係の変化,ユーザの興味関心や発信するコンテンツ情報の変化を指す.このような情報を予測することで,物事に対する社会的な反応や市場規模を予測できるようになる. 本年度は,申請時の研究計画に従い,(1 )ユーザの興味関心とコンテンツの潜在ベクトルの相関と社会的バイアスに基づく,友人関係と興味関心の生成モデルの考案,(2) ユーザの社会的影響力と影響の受けやすさに基づく情報の伝播を考慮した潜在ベクトルの変化の予測モデルの考案に取り組んだ.考案モデルはGPUを活用した並列処理による効率的な学習が可能であり,ソーシャルネットワーク中に存在するエッジ数に対して線形な計算量を持つことから,実社会に存在する大規模なネットワークデータに対しても適用可能であることを実験的に示している. 実験対象とするソーシャルネットワークとして,研究者の共著ネットワークと,Twitter におけるリツイートネットワークを用い,既存の予測モデルと本研究の予測モデルとの予測精度の比較を行った.比較手法として,グラフデータにおけるエッジの出現を予測できるモデルとして知られる,グラフニューラルネットワークに基づく予測手法と,時系列データの予測モデルの代表的な手法であるRNNに基づく手法を採用した.実験の結果,既存の予測モデルと比較して,より正確にエッジの出現と興味関心を生成できることを確認した.特に,モデルの学習時から時間が経過した時刻においても,比較手法と比べて予測精度の低下率が低いという実験結果が得られた.本研究成果は国内会議 (DEIM2021) にて発表し,最優秀論文賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通り進捗している.本年度はユーザとコンテンツの潜在的な特徴量に着目し,それらの相関関係と社会的なバイアスに基づく,友人関係の確率的な生成モデルの構成と,ソーシャルネットワークを通じた潜在的な特徴量の伝搬のモデル化による予測モデルの双方を実現し,実データにおける長期的な予測に対する有効性を確認した.これらのことから,本研究の目的はおおむね順調に進展していると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた研究成果によるモデルは,予測精度が高い一方で,解釈性が低いという問題が存在し,データから学習されたパラメータを観察することによる,ネットワークの性質の推定が行えないことが明らかになった.そこで来年度は,本年度の研究によって得られたモデルを拡張し,さらなる応用を検討していく.より具体的には,トピックモデル等の要約モデルの考え方を取り入れることで,より解釈性に焦点をあてたモデル化について検討していく.ここでは潜在ベクトルを,ユーザが持つトピックの確率分布に置き換え,予測モデルの推定とトピックモデルの推定を交互に行うアルゴリズムを構成する.このアイデアに基づき,この目的を達成できるモデルを構成する. また,モデルの予測結果から逆算して,今後発展しそうな概念を探索することで,ユーザに対するコンテンツの推薦を行うという文脈での研究を計画している.
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Causes of Carryover |
COVID-19 による渡航制限および,国内外の会議のオンライン開催により,本年度計上していた,共同研究者との打ち合わせのための旅費と研究動向調査のための旅費が次年度使用額として生じた. この分の予算は,より大規模なデータ分析を行うために,計算サーバに搭載する大容メモリを搭載したGPUを計上する.
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Research Products
(3 results)