2020 Fiscal Year Research-status Report
声帯音源情報を取り入れた位相補正に基づく話者推定法の開発-法科学応用へ向けて-
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20K23357
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
岡田 昌大 科学警察研究所, 法科学第四部, 研究員 (80874502)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 位相補正 / Electroglottography / 声道の位相特性 / 話者性・個人性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、声道の位相特性可視化のための位相補正法(信号処理)について検討した。数値シミュレーションと実音声での分析実験の双方から調べた結果、本方法は音声の新たな可視化法として有効であることを示すことができた。特に、データベース「MULTEXT-J」を用いて実音声に対する有用性を検討したところ、基本周波数の低さが大きな要因となり、男性の音声が女性の音声よりも見やすい可視化になることがわかった。また、位相特性の厳密な可視化には、声帯間を通過する体積流を計測する必要があるが、Electroglottographyにより得られる信号でも可視化は可能であることが示唆された。すなわち、声帯のある喉元に電極を貼るという非侵襲的な計測だけで可視化は実現できることがわかった。加えて、先行研究を参考にし、分析時の窓関数にはブラックマン窓を用いたが、可視化には特に支障がないことも確認できた。なお、本結果は令和3年度にAcoustical Science and Technologyに掲載予定である。 令和3年度には音声と声帯音源波形の対データ作成のための収録実験を予定しているが、現在は自身を被験体にして予備実験を行い、実験手順や収録条件、読み上げ原稿の選定等の準備を進めているところである。 また、本研究の話者性・個人性の考察では目視による検査に主眼を置いているが、客観的(数値的)な考察も行えるように動的時間伸縮法に基づく方法の導入も検討し、その計算環境を整えているところでもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染拡大が未だ終息しないことを踏まえ、本課題採択後すぐに研究手順の順序を変更した。そのため、収録実験の未実施等、進捗は遅れているが、遅延は最小限に抑えられている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスの感染状況を考慮しながら、参加者を募集し、日本語音声と声帯音源波形の対データ作成のための収録実験を行う。並行して、外国語も視野に入れて、類似のデータベースを探す。データが入手でき次第、令和2年度に検討した位相補正法によって、声道の位相特性の可視化を行い、話者性・個人性について検討する。
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Causes of Carryover |
本課題申請時には、令和2年度から参加者を募集し、音声と声帯音源波形の対データ作成のための収録実験を行う予定であったが、コロナウイルスの感染拡大状況を踏まえ、本課題採択時に実験手順の順序を変更し、既存のデータベースを利用した分析を行うこととした。これに必要なパソコンと書籍を早急に入手するため前倒し申請を行ったが、ワクチンの供給が開始し、実験実施の可能性が見えてきたため、参加者への謝金等に充てられるように書籍の購入を保留にした。このような経緯で次年度使用額が生じた。 研究手順の順序を入れ替えただけなので、当初の計画通り、収録実験を実施した際の謝金等に充てる予定である。しかし並行して、収録実験が十分に実施できない可能性も考え、外国語も視野に入れて既存のデータベースを追加して探すため、データベースが見つかった場合にはその購入に充てることも考えている。
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