2020 Fiscal Year Research-status Report
蓄熱輸送を導入した排熱回生量を面的拡充する新熱融通システムの設計と評価
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20K23360
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 祥万 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (80881200)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 蓄熱 / 蓄熱輸送 / バイオマス / 排熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオマス発電所の熱物質収支を予測可能なプロセスフローダイアグラムを開発し、排ガスや余剰蒸気を用いて蓄熱する場合の蓄熱量を定量化した。さらにバイオマスの乾燥プロセスの導入など、プロセスを変更した場合における挙動も予測し、ゼオライトの水蒸気吸脱着サイクルを用いた蓄熱輸送システムの構成装置設計の境界条件の範囲を決定した。また、移動床・間接熱交換方式を用いた出熱装置および移動床・直接熱交換方式を用いた蓄熱装置の性能を予測する、熱・物質収支を連成した数値解析モデルを開発、修正し上記で与えられた境界条件の下、性能を予測することに成功した。また、設計パラメータを整理し、可変パラメータ(ゼオライト流量、投入時吸着量、需要蒸気圧力など)においては決定した境界条件の範囲内で複数の条件の数値解析を実施し、回帰分析を実施することで、複雑な数値解析を経ずとも高速に装置の大きさや燃料削減量を予測することが可能となった。また、蓄熱輸送システムに必要な装置類(熱交換器やチャンバー、コンベアなど)や運用上必要なコスト(ブロワ電力、輸送時の燃料など)を見積もり、条件に応じたコスト解析が可能なモデルを開発した。また、コストに加えてシステム運用時、さらに各装置製造、廃棄時のGGH排出量も考慮したライフサイクルでのGGH排出量も同時に評価できるようにモデルを拡張した。また、全国のバイオマス発電所ならびに排熱源となりうる廃棄物処理場や製糖工場、製紙工場などの汽力発電を所有する工場が所有するボイラやタービンなどのデータを整理し、次年度の排熱回生量の定量化に向けた準備を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目標である、蓄熱輸送システム導入による熱の可搬距離の拡大とそれにより増大する排熱回収量の定量化に向けて、まず必要となるのが、複雑な数値解析を都度経ずに高速にシステムの性能が予測可能なモデルの開発であった。今年度はバイオマス発電所のプロセスフローダイアグラムから決定した蓄熱輸送システムの構成装置設計の境界条件の範囲で数値解析のデータを積み上げ、その結果を設計パラメータで回帰分析することで、与条件における高速なシステムの性能予測を実現可能とした。さらにケーススタディをベースに蓄熱輸送システムのコストや、装置の製造、廃棄までを含めたライフサイクルGHG排出量を算出するモデルを開発したことにより、上述した蓄熱輸送システムの性能の高速予測と組み合わせることで、様々な条件における蓄熱輸送システムのコストおよびGHG排出量の予測が可能となるため、様々なバイオマス発電所において熱可搬距離および排熱回収量を予測する次年度への研究の基礎を構築することができた。 これは当初の計画通りであり、概ね順調に研究が推移しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築した、蓄熱輸送システムの性能を高速に予測できるモデルとコスト、LCOE(Levelized Cost of Energy)・ライフサイクルGHG(温室効果ガス)排出量の算出モデルを適宜修正しながら、両モデルを統合する。輸送距離と需要量をパラメータとして、現段階の熱価格において排熱を輸送可能な熱可搬距離およびその条件におけるライフサイクルGHG排出量を定量化する。必要に応じて蓄熱・出熱装置の実証データ,材料特性等のデータを実験的に取得する。また、地理情報システムGIS上にバイオマス発電所と蓄熱輸送システムが供給可能な低温熱利用産業(食品加工業など)をマッピングし、それぞれの排熱源および需要側の条件における熱可搬距離から、回生可能な排熱量を定量化する。さらにバイオマス発電所を出力や需要までとの距離などのパラメータでクラスタリングした上で、それぞれのクラスタにおいて、蓄熱輸送システムの設計パラメータ(伝熱面積や運転条件など)で感度解析を実施し、回生可能な排熱量への感度が高いパラメータを抽出、各クラスタに応じて必要となる蓄熱輸送技術の開発にフィードバックする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、予定していた旅費の使用が大幅に減額したため、次年度使用額が生じた。R3年度は感染症の拡大状況を鑑みながら、必要に応じて出張で取得予定であったデータの一部をGISのデータ購入などで補填することを計画している。
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